耳障りなシンフォニー 公演情報 tYphoon一家 (たいふーんいっか)「耳障りなシンフォニー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     父の遺言(リヴィングウィル)によって脳死判定で生命維持装置を外すことに同意した兄弟・姉妹5人が集まった。

    ネタバレBOX

    セットは、病院の待合室といった風情。ソファの左右に椅子が若干並べてある他、ソファ前には小振りのテーブル。
     背景には背景が透かし見える幕。ここからピアノの音が聞こえるが、それは彼らの父親が良くピアノを弾いていたことに内容が密接に関連するからであり、このことがこの物語で重要な役を果たすからである。(因みに電子ピアノは生演奏で設定上はピアノバー)
     日本は、常に先頭に立つことを嫌う官僚たちの小賢しい判断の為、唯一の原子爆弾による被爆国であるにも関わらず正しいことを積極的に推し進めることができない「国」であるから、リヴィングウィルについても本人の生前の意志を尊重できない。オランダなどヨーロッパ先進国と比して雲泥の差がある。然しながら高齢化社会は否応なく進み逆三角形を為す人口構成の中、植物人間化した親族を養わねばならぬ残る家族の負担は増大するばかりである。人倫の問題については聊かの議論が必要でるが、家族の気持ちの問題は、家族自身が判断すれば良い問題であって、国家が判断すべき問題ではあるまい。こういった現在進行中の実際問題にも目を向けさせる作品である。
     この一家、母が早くに亡くなっていて一番年上の長女が母代わりを務めてきた。年齢的には次が長男、次男、次女、末娘である。長男が、一番だらしが無く家業のワイナリーを継いだものの倒産寸前迄経営を悪化させた挙句、逃げをうったためずっと他の兄弟と会わずにきた。その穴埋めをしたのが、銀行勤めを止めて兄の代わりをした次男である。次女は売れない陶芸家と結婚していて、美術品ギャラリーを経営しており、陶芸家は妻に食わせて貰っているので、長女には受けが悪い。末娘はTV局のアシスタントディレクターである。
     兄弟間のいざこざは、いつも肝心な時に嘘を吐き逃げてばかりの長男を、父の生命維持装置を外す日とはいえ、何故呼んだのか? に対する紛糾と次女夫妻の経済問題、母代りに皆の面倒をみて来た姉の揮う強権に対し、各兄弟が選んだ人生についての鬩ぎ合いを通しての現状理解と納得が得られる。この間兄弟間の紛糾に何くれとなく関与しモデレイトするのが、唯一の他人である陶芸家である。彼の介在もあってラスト、父の大好きだった曲が皆を一つにする。

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    2018/02/18 12:49

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