私信/来信、ユートピア 公演情報 青色遊船まもなく出航「私信/来信、ユートピア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    チラシにユートピアとは「素晴らしく良い場所であるが、どこにもない場所」と書かれている。現実には有り得ない永遠平和だが、あの世と対話する行為を”祈り”と呼ぶ人もいる。
    この公演では死者も出るが、物語の主要な役柄はオカマで、死者との関わりで魂を失った人物として描いている。
    それにしても観念的で一筋縄ではいかない思索を要する公演であった。
    (上演時間1時間40分)【来信、ユートピア】

    ネタバレBOX

    舞台はオカマBar「純」_日常とはちょっと異なる場所であるが、そこで働く人の過去や現在の心境を通して生活感が浮き上がってくる。繁華街にあるであろうBar店内、そこで働いている人々の孤独、悲哀といった感情を賑やかな場所(街)と対比させることで、より空虚感が強まる。妻を癌で失ったオカマ・ユキ(大竹崇之サン)は、ひょんなことで知り合った家出少女・アコ(川島まゆかサン)との出会いと触れ合いによって魂を再生させていく。その過程を、過去と現在を往還させて紡いで行く。

    この店の来店客の苦しみ悩み、店員(オカマ)と客の双方の苦悩から見えてくる生き難さ、そこで披瀝されるのが”化粧”の話…化粧とはゲーム、過去を隠して自分を隠して(言い換えれば偽り・誤魔化す)、自分を好きになる。時々発せられる禅問答のような台詞。その会話が観念的で深い。さらに化粧は色が分からない、感じる心は奪われないと進む。虚飾は化粧だけではなく、衣装さらには女装へ広がる。ユキは妻・雪乃(長谷川景サン)を失い魂を失っていた。因みに、色は色弱者のデザイナーとの関わりもある。

    舞台セットは、奥にユキの部屋(現在と過去に雪乃と暮らしていた所)、そこには所狭しと衣類が散乱しており、その中にベット。客席寄はオカマBar「純」の店内…下手側にカウンター、上手側にBOX席があり、カウンター・テーブルの両方にボトルが置かれている。その舞台セットを黒の紗幕で閉め、客席との間に別空間(街中)を出現させ立体感を演出する。

    回想への恐怖がノイズ、現実の生活を雑踏・列車の軋みという効果音で表現している。また紗幕全面やボトル内に電飾を施し点滅させることで幻視的な効果を生む。ラスト、ユキは鬘、女装を解き新たな一歩を…。
    しかし、せっかくのオカマとしての存在と独特な会話が生きてこないのが残念。単なる化粧という外見の虚飾を装うだけに止まったように思う。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/02/12 15:06

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