いずこをはかと 公演情報 PocketSheepS「いずこをはかと」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    タイトル「いずこをはかる」の意…劇中の説明によれば日本の古典に求めることが出来るようだ。意味は” どこを目あてにして”という曖昧なものらしい。
    物語は、チラシの説明に書かれている通り、大正というデモクラシーが高揚してきた時代を背景に、少し大げさに言えば家訓という縛りと自由・解放という「家制度」と「個人」という対比構造が透けてくる。タイトルは家制度と個人の両方に係るような意味合いを持っているような…。
    (上演時間2時間10分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セット…左右の壁はステンドグラスまたは寄せ木細工の模様のような小片を結合し、形状・模様を表現したものが描かれている。正面は両開き扉でその上部の壁も形状・模様が施されている。セットはいたってシンプルなものであるが、これは多くの場面が繰り返し登場するため、観客に情景・状況の固定観念が生まれないような配慮とアクションスペースを確保するためであろうか。

    梗概…その昔、主人公が居る財閥先祖が主君へ献上(生あるもの)したが、大事に仕舞い込み餓死干乾びた。逆上した殿から厳罰、呪いが…。以降この家では大事な者(長女)は屋敷奥へ閉じ込め、外部との接触をさせなくした。外に出れば必ず周囲の人々も含め"災い"が起きるという言い伝え。
    しかし、四六時中家の中では退屈、刺激もないことから外に出てみたいとの欲求も自然の成り行きであった。そんな時、金目当ての泥棒(スリ)集団が屋敷に侵入し手違いから娘を連れ出してしまう。いや、娘が連れ出して欲しいと懇願したというのが正しい。
    その道行きは…。ちなみに”災い”とは、希望を持つから絶望が生まれる。初めから希望などという幻想は抱かないこと、自由恋愛もなく決められた相手と結婚すること。ここに大正期へのアイロニーも垣間見える。

    人それぞれの境遇や立場がしっかり説明され、それに従って行動している。躍動的な体現、時に観念的な台詞、理路整然とした理屈では追いかけられないストーリー展開、そしてミステリー要素も加わる。泥棒の生活感と財閥令嬢の自由奔放な考え、妄想がうまく対比され、大正という明治期と昭和期の狭間にあった短い期間の特徴を表現していたようだ。それは壁に描かれた模様等によっても印象付けられる。

    財閥家の当主は妹(瑠璃=和泉奈々サン)を閉じ込めておきたい、一方泥棒(珊瑚=植草みずきサン)と変な友情が芽生え、双方とも自由に成りたいとの思惑は一致し遠方への旅立ちを試みるが…。そこに刑事、泥棒仲間やその親代わりの女親分(銀子=きむらえいこサン)、この出来事に便乗したい新聞記者、瑠璃の婚約者(当事者同士は面識もない)、使用人、さらに神父、修道女等、多くの人物とシーンが登場する。

    全体的に演技が大げさ、騒がしいイメージが強く、当主・鋼太郎(内堀克利サン)が現れる場面が説得、説明場面ゆえ落ち着いて見えた。特長として、珊瑚役がストーリーテラー的な役割も担っているようで、物語の展開や心情描写への導きとしては効果的であったと思う。ラスト、遠く南の地で観たいと願った蝶が舞い余韻が…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/02/11 11:09

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