満足度★★★
鑑賞日2018/02/08 (木) 14:30
座席1階A列5番
3人の女性と3人のストーカー(ネットで知り合い共謀する)の話。
かなりえぐいのですが、アフタートークでも話されていたように、3人のストーカーに異なる性癖、社会的立場、行動基準、価値観、相手の女性への感情を持たせることで、彼らを単なる異常者としてではなく、どこか観客と意識の共有を図れる存在にしたところは、秀逸なところ。
ただの異常者で括っては3人いる必要はないし、観客としてはただただ女性のみに感情が行ってしまうところを、女性3人・ストーカー3人を交錯させ多層的に表現することで、物語に厚みを出している。
ストーカー各自と女性との出会いと関係性も細かに描いていて、その後に起きる拉致監禁という悲惨な事件へとボルテージを高めていく。
しかし、拉致監禁後に今までの高揚感が急に失われていくのが残念だ。
その理由は、拉致監禁の描き方にあると思う。これが異様にさっぱりしている。
拉致監禁は、彼女らそれぞれがどのようなトラウマを持ち、その後の対応や生き方に変化を生じさせるかの重要な契機だし、同時にストーカーらが彼女たちへの心情を変化させその後の行動の方向性を獲得していくかの素因となるからだ。
時間の関係もあったのだろうが、拉致監禁の場面はもっと丁寧に(執拗に)描き込んで欲しかった。
それと、彼女らと共闘する弁護士が、彼女らを助けた人物から監禁された場所に関して情報を得ているのだが、それが劇中で活かされていない。
和田の溶鉱炉=ブラックホール説は、目を見張る発想なのだが、それがストーカー3人の話で閉じてしまうところがもったいない。溶鉱炉の存在を彼女らが知ることで、彼女らが置かれた立場を知らせることもできたように思う。そこでの感情の変化なども見てみたかったところ。
役者さんに目を向けると、「フォトジェニック」でのような、小松崎さんの爛れるような妖しさ美しさ、人を背徳の淵に誘うような艶っぽさ、倒錯感一杯の仕草を期待した向きには、今回はちょっと物足りなかった気がする。弁護士という役柄なので、どうしても性格の固い面が出るのは仕方がないだろうけれど、同性愛者的な設定が隠されているわけなので、その陰の部分をもうちょっと鮮明に露呈させると、彼女の魅力が引き立ったかと思う。
(もちろん、同じような役をやらなければいけないということではなく、彼女の強みとして)