おせん 公演情報 サスペンデッズ「おせん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    井原西鶴・好色五人女の巻二「情けを 入れし樽屋物語」のおせんをモデルにした創作で、江戸時代に実在した大坂・天満の樽職人の女房せんの話…それを題材に劇中劇のように仕上げているが、それも単なる劇中劇ではなく、物語性を別の角度から捉え芸術性豊かなものにしている。

    観劇当日は雨が降っていたが、前説で「雨から雪になるかもしれない天気予報にも係わらず(中略)観て良かったと思えるような公演にしたい」とあったが、その期待は裏切られることなくとても素晴らしい公演であった。
    3人芝居、その演じる主体が特徴で原作の悲喜交々とした物語を別次元の高みへ導いていた。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台セットはシンプルで、大きな衣桁のような衝立(所々に唐草模様の布が縫いつけられている)、折りたたみ式の木机3つ。劇団員三人が複数の役を担い、サスペンデッズの「おせん」を創っている。物語は、木机に折り重なるように横たわっているところから始まる。

    梗概...貧しい農家の娘おせんは、14歳の時、麹屋に女中奉公に出される。姿かたちがよく、働き者のおせんは麹屋で重宝されている。そのおせんに出入りの樽屋は惚れているが、しがない職人の樽屋はそれを言い出せない。樽屋の気持ちを知った産婆は、樽屋のためにおせんがお伊勢への抜け参りに出かけるよう仕組み、樽屋を同行させる。しかし、やはりおせんに気のある久七も一緒に旅をする事になってしまう。邪魔は入ったが何とか夫婦になった樽屋とおせん。数年後、麹屋の法事の手伝いに来ていたおせんは、麹屋主人の長左衛門との仲を女房のおきちに疑われてしまう。そして…

    物語を紡いでいるのは人形3体。それを役者3人が擬態(体)化した設定であり、冒頭、横たわっているのは、用済みで廃棄されたような格好に思える。3体は主役になれない、端役のような存在であったらしく、主役人形は出て行ったという。勿論、主役人形は登場しない。その状況で芝居が出来るか心配な3体は、そのうち自分たちで全てを演じてみようと…その演目が「おせん」である。既にボロボロに傷んでいるがまだ役に立つ、廃棄されたくないという危機意識のようなものが働く。主役も含め自分たちで複数役(女形あり)を割り当て必死に練習する姿(勢)に圧倒される。練習という設定であるから、自分たちでダメ出しをし始めのうちは貶し合っていたが、いつの間にか励ましあう。生身の人間という設定より、人形という視点で捉えることによってより人間(社会)を客観的に観察することが出来るという優れた演出。

    また舞台技術が効果的で、和物らしく拍子木を用い、照明はモノトーンを意識し暗・明の強調で引き立たせる。演技も素晴らしく、思わず人間劇と思い勝ちであるが、人形による芝居練習であり、体が時々軋むような擬音を織り込む細やかな演出によって人形芝居ということを確認させる。人形によって人間の情や社会の在りようが浮かび上がる秀作。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/02/04 10:56

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