ハラカラ・コエダス・レクイエム 公演情報 GAIA_crew「ハラカラ・コエダス・レクイエム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「グリーンフェスタ2018」特別公演、この芝居は再演(再葬)で初演は「グリーンフェスタ2014」で、その時に”BASE THEATER賞”を受賞している。初演も観劇しているが、今回は微笑ましいシーンも多く、作・演出の加東岳史氏が当日パンフに「会話劇ベースのチョット不思議な話なのですが、やはり初演より少しエンタメっぽい演出になってしまいました」と書いており、その延長線上での再演らしい。
    面白いにも係らずカンパ制(気持ちの香典)。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは中央に祭壇のみ、上部に遺影(破顔で滑稽な姿)が飾られている。ちなみに初演時には白木の祭壇でレンタル料が高額なこともあり、他の劇団と共同で借りていた。

    交通事故で亡くなった女性が成仏できず、この世を彷徨い自分の葬儀を別の世界から眺めるというもの。根底にあるのは「腹から声出すレクイエム(鎮魂歌)」か、もっとも主人公は”肥えだす”人であったが、いずれにしても思わぬ事故で亡くなったことへの慟哭がしっかり伝わる。公演は映画「生きる」(黒澤明監督)を連想してしまう。もっとも映画は病死(癌)で、死ぬことが分かっていた主人公(地方公務員)が、それまでの人生を顧(省)み、後悔しないような生き方に改めた姿が映される。公演では交通事故で亡くなった後の家族や職場(銀行)等、周囲の人々の思いの中で主人公の人柄なりが描かれる。人間的な深みというよりは、日常を坦々と真摯に生きて来た、特別な人や出来事ではなく普通の人が描かれているところに共感、親しみを覚える。それは故人を偲ぶという荘厳な儀式ではなく、儀礼的に執り行うといった感じである。それが段々と意識の変化が生じ、家族の絆、職場での評価など良い方向へ展開して行く。
    故人を描きながら葬儀を通して人の嫌らしい面、例えば次女は葬儀に託けて彼を紹介しようとする。過去に結婚詐欺に遭い、今度の彼の見栄えを良くしようと容姿(鬘)や職業を(警官と)偽る、三女は姉(故人)の遺産を探し回る等、欲望・虚栄・偽善などを断片的に織り込み、物語を単なる回想から重層的な物語に仕上げている。そして動かぬ故人は、他者の動作で存在感を示す(体重が重たく棺桶を動かせない)。

    もう一つの見所は、主人公は霊であることから生者とは話すことが出来ず、その思いは死神(女の子)の力を借り、葬儀社のアルバイトを通じて意思疎通を図ることになる。アルバイトは、ヤル気がなく少々頼りないが、段々と周囲の人の勝手気ままな言動に呆れ、一方主人公の真面目な性格などに心が動かされる。アルバイトという中途半端な気持から、死者と残された人の気持に寄り添う葬儀の仕事に遣り甲斐を見出すという成長の姿が描かれる。

    葬儀という儀式を通じ一人ひとりの人間性を炙り滲ませる演出は見事であり、同時に第三者(葬儀社の社員-アルバイト)を巻き込んだ成長、一種のサクセスストーリーは仄々とし心温まる公演であった。ラスト、死神ならぬ別の正体が明かされ余韻が…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/02/03 10:03

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