忘れる日本人 公演情報 地点「忘れる日本人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    地点がKAATで行う公演は、とにかく驚かされる。
    ほかの劇場では不可能ではないか、と思うような大がかりなセットが組まれることが多い。
    そして、地点の役者(演出)たちはそのセットに負けないぐらいキョーレツである。
    上手いのである。

    (以下ネタバレboxへ)

    ネタバレBOX

    今回劇場内に入ると舞台の真ん中に木造船が置いてあった。
    演劇のセット用に作ったとは思えない、本格的な木造船だ。
    たぶん本物だろう。重さも十分にあることは後ほど判明する。

    使われるテキストは、松原俊太郎さんの作。
    このテキストが滅法面白い。
    とにかく面白いので、カットアップされていたとしても聞き入ってしまう。

    いつもの地点節的な節回しがあったりなかったりなのだが、それとのマッチングが見事。

    地点はセットの驚きだけでなく、役者に無理を強いているように感じるのが特徴でもある。
    舞台の上を延々と走らせたり、坂になった舞台を上らせてみたりと。
    今回は足を擦りながら歩かせる。「摺り足」とも微妙に違い、足をずりずり動かしながら移動する。
    これは結構大変だ。

    さらに重そうな木造船を御神輿のように担がせる。
    木造船は御神輿の担ぎ棒のように丸太の上に固定されている。
    実際役者だけでは持ち上げることができずに、観客の参加を促す。
    そしてなんとか持ち上げ移動させる。

    ヒモで区切られた中にあって、見えない壁のようなものから出るとノイズがする趣向もある。

    役者の衣装には日の丸のシール。
    そして台詞の合間には「わっしょい」のかけ声。
    木造船を御神輿のように担ぎ上げるので「わっしょい」とはそのことか、と思いつつも、「わっしょい」の言葉の多さと日の丸に、ハタと気づく。

    確か「わっしょい」の語源は「和を背負う(わ を しょう)」ではなかっただろうか。
    つまり「和=日本」を「背負う」のだ。
    そこでタイトルの『忘れる日本人』だ。

    日本人はいろいろ「忘れて」きた。「忘れたことにした」。
    「針」のように身体を刺すものがあって、それを感じたり感じなかったりしながら。

    重くなった「日本」をかけ声とともに、人々は手助けしながら背負う。
    「声をかけたら」「手助け」してくれるのは舞台の上から声をかけたときだけなのか。
    これからもずっと背負わなくてはならないのだろうか。

    ヒモで区切られた狭い世界の中で、外に出ることも出来ず(出るとノイズ)、重くなった日本を背負いながら右往左往する姿は、今の、そしてこれからの「日本人」なのだろうか。

    0

    2018/01/08 04:38

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大