朝鮮総聯幹部の息子 公演情報 劇団 鳳仙花 「朝鮮総聯幹部の息子」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    劇団鳳仙花 旗揚げ公演。

    俳優の李昌赫さんが自分自身の体験をもとにした舞台。
    朝鮮総聯幹部の息子であり、親の期待を裏切り役者になりたいという主人公が李昌赫さんなのだ。

    製作・監修の松枝佳紀さん(劇団アロッタファジャイナ)のツイートで知り、昨今の情勢もあり、非常に気になり出かけた。

    (以下ネタバレboxへ)

    ネタバレBOX

    タイトル通り「朝鮮総聯幹部の息子」として経験した様々な出来事が語られていくのだろうと思っていたら、確かに前半はそうであった。

    特殊な環境ではあるが親が思う子ども将来像に当てはまらない希望を子どもが持ってしまうことへの、親子のぶつかり合い、という視点からであると、(極端すぎるのだが)まあ、「あるあるなのかな」と思っていたが、その「特殊な環境」は考えている以上のものであり、押さえつけられて生きてきた主人公にとり、とても厳しいものになる。

    さらにラスト前からの展開は、血を吐くようなものになっていく。
    血を流さないと終わらない物語なのだ。
    心に響いた。

    主人公の(元)恋人と主人公の母親を同じ女優さんが演じていた。
    母親と同じような人を愛してしまう息子の感覚を表現しているのではないかと思っていたのだが、ラストでその本来の意味が一気に姿を現した。

    息子が恋人を刺してしまうのだ。
    つまり、恋人を刺してしまう主人公は、同時に「母親殺し」をしてしまう。
    寺山修司のような展開に震えた。

    しかも、主人公が恋人を刺すことで選んだのは父親であり、「同胞のために役者になる」と言い続けた主人公の言行と一致していく。
    それが彼が選んだものだったのだ。

    自分自身の一番根っ子の部分を、旗揚げ公演で露わにした。
    次はどういう展開で作品を作っていくのか、気になる。
    しばらくは目が離せない。

    朝鮮総連、民団(在日本大韓民国民団)、済州島(チェジュとう)出身者のこと、等々、公演を観るためにある程度知っていたほうが良い知識があるので、当日パンフあたりに解説があればよかったと思う。

    この公演の前の時間に、イギリスのミュージシャン、ピーター・ハミルの歌詞についてのディスカッション・イヴェントに参加した。
    彼は「自分の書いた歌詞には自分があらわれている」「しかし、告白はしていない」(「告白」には宗教的な意味合いも含まれるらしい)と言った。

    そしてこの舞台である。
    主人公であり、作・演出をした李昌赫さんは、この作品で「告白」まで行ったのだろうか。それが帰り道ずっと頭の中をぐるぐる回っていた。

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    2018/01/07 06:51

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