満足度★★★★
仕掛けられた爆弾で死ぬ、がピリオドの幾種かのシーンが重ねられる。フリダシに戻って「またかよ」とこぼす〈主人公〉?が振舞いを変えてみたりしても結局無駄、というオチがつくバスジャックのシーンが相対的に多いが、自分が乗っ取るバスに爆弾を仕掛ける行動には解かれるべき疑問があるのに多くを説明しない事、などから、これは様々な連想を喚起する仕掛けとしての演劇、具象のようで抽象である絵画、として観てしまった。
テンポはよく、何かすっきり感もあるので背後関係の整合性は考えられているのだろう、位が関の山。
死、すなわち命の扱いが演劇の中でゲーム感覚に軽くなっていくプロセスを、突き抜けた先の感覚麻痺が狙いだとすれば、その意図は買いである。
何度も訪れる爆死をさほど嫌悪感なく受け入れられたのだったが、やはり、というか、リアリズムに軸足を置かない芝居=抽象世界は記憶に残りにくい(個人の感想だが)。抽象世界にはその世界に雄弁な方途、視覚的聴覚的な刺激の創出が、通常以上の意味を持つのではないか、などと考える。その意味で今回の舞台、言葉だけの「一人歩き」を免れた点が評価されようが、この挑戦にはもっと上があるような。。