満足度★★★★★
サンプルの10周年記念公演にしてサンプルの解散公演。
奇妙な新興宗教の集会を模しつつ、教祖と使徒たちの生い立ちと遍歴と崩壊(と未来!?)が綴られていく。
半円形に並べられた観客席。そこに座る我々は、ある新興宗教のイベントへの参加者として設定されている。マイクを持って話す男が、客席に声をかけたりする。
ある男の腸内細菌が、高度な意識を持っていて彼に呼びかけてくる。人類が生き延びるためには、裏返らなくてはならない、と。
さまざまな歪みを抱えた男女が、彼によって救われ、信徒として彼と日々を共にする。その人々が順に自らの来し方を語っていく。
彼等はすべてを分け合い共有する。腸内細菌も性的な営みも。
それから彼らの旅について語られる。遍歴の間に起こるマジックリアリズム風の出来事は、いわゆる劇中劇として信徒たちによって、演じられたものだ。
それが終わった時、ステージに上がり込んできた1人の男は、反社会的な事件を起こして世間の非難を浴びた人物だった。彼の起こした事件によって、教会全体も社会の非難を浴び、団体存続の危機に陥ったという。なるほど、それゆえの遍歴なのだ。
奇妙な味の文学的な物語を、荒唐無稽なディテールと個性的なキャストが支えた。そして、そういう枠組みを逸脱するエンディング。
観終わった後、あのポスターが何を示していたのかようやく気がついた。面白かった……というより、じんわりと侵食されるような奇妙な感慨を抱えて劇場をあとにした。