満足度★★★★
『不謹慎な家』を拝見。
えっ、何これ?なんでこんなに可笑しいの?と思いつつ観ていた。まあ、この劇団の作品はおおむねそんな感じかもしれない。
恋人が人を殺して捕まった。みのりは彼を待つと言う。昔からみのりを想っている濱津は、彼女の論理に圧倒され、彼女の感情に翻弄れつつ、彼女を見守っている。
夫や恋人が刑事事件の犯人として刑務所にいるという境遇を同じくする女たちが集まって一緒に暮らすことになる。一人では揺らいでしまうかもしれない「待つ」行為は、客観的には共感を得難いことなのかもしれない。たとえばみのりの恋人に殺された人の遺族にしたら、犯人が早く自由になって欲しい、という彼女の想いは不謹慎なものなのだろう。
そんな中、みのりが一人の男を連れてくる。新しい恋人ではないし、浮気でもない、待ってることに変わりない、とみのりは言うが、男の側はそうは思っていない。彼はかつて刑務所に入っていて恋人に去られたことがあり、「君は待てないと思う」と言い切る。
待っている女たちもそれぞれの事情や複雑な想いを抱えている。その家にいるのはつらいけれど、彼女の抱えているものを理解してくれそうもにあ世の中にひとりで向かっていくのはもっと恐ろしい。
題材はそうとう深刻だし、展開だって明るいばかりじゃないし、そもそも登場人物がメンドくさいヤツばっかりだ。でも、破天荒な登場人物の破天荒な言動に翻弄され、呆れつつやっぱり笑ってしまう。
笑ってるうちに、行き場のない想いが積み重なって、ジンワリとあたたかい何かが胸を満たす。不安や孤独をアクの強い笑いで彩りつつ、彼らの見せる切実さが観客の胸を打つ。そして彼らがとても愛しくなる。この、じんわり愛しい感じが、MCRの魅力なのだろう、と思った。