満足度★★★★★
初めての地点観劇。
開場と同時に劇場内ではニーナがティーサービスを始め、メドヴェージェンコさんが手伝い、トレープレフは「ニーナ!」と愛するニーナを目で足で執拗に追う。クラシカルな舞台空間に、マーシャが奏でる暗いピアノ曲、天井でくるくると回るファンと、壁に映るその影。磁場に圧倒される。開演前からそこには明らかに異空間が立ち上っていて、観客の入場に伴うざわめきも、その生成上で大役を果たしているかのようで、そこでまず感激。ティーサービスを行いながら、ニーナがロシアで『かもめ』を上演した際の逸話などを紹介してくれ、笑いが起きる。
そして『かもめ』。ほとんど、トレープレフとニーナの物語のようである。特にトレープレフは饒舌にしゃべる。「地点語」と言われる、アクセントやイントネーションが日常の私たちが使う日本語とは異なる、風変わりな発話で。時にそれはラップのよう。時にその絶妙な言葉のタイミングで、なんてことない言葉で笑いが起きる。なんなんだこれは。
トレープレフは常にものすごい熱量で動き回り、ニーナはふわふわしていて、アルカージナとトリゴーリンはゆったりと貫禄を持って歩き回り、マーシャとメドヴェージェフさんはほとんど動かない。メドヴェージェフさんは、サモワール(ロシアの壺)を持って終始一言も話さなかった(と思う)。
なんなんだこれは。とまず圧倒された(翌週の『桜の園』はもっと具体的に観れた)