満足度★★★★
上映会にて「お母さんが一緒」を楽しく鑑賞(私には「男たらし」に肩を並べる面白さ)。翌日「痴人の愛」観劇。パンフの挨拶に、ペヤンヌと安藤両名の間に激しく演出面の意見の相違があったと読める文言がある。若いつばめを囲い、養護者時々恋人(?)という、一見優位とみえる女が、結局は恋い慕う側の弱みで「いかないで‼」としがみつく事になるラスト、なりふり構わぬ女の執着は男の劣情を刺激したか、互いに縺れ合い(漸くにして?)結ばれる。そして騎乗位になった女が首を絞めて男が果てると、死者の上には子種を得た女の満面の無気味な笑みが・・ナレーションで進む文学調な舞台だが、基本線は隠微でどろどろとした人間の欲望の行方をたどって行く「暴露モノ」で、ブス会らしいダークな素材だ。
だが安藤玉恵の演技はペヤンヌのいつもの(三浦大輔にも通じる)ディテイルをつく演技よりは、軽喜劇に寄ってサービス精神旺盛さを発揮していた。行動線は明示されており、これ以上中年女の爛れようを役の細部にまで反映させるのでなく、その行為や様子のおかしさを自虐的にカリカチュアする演技を安藤は選択した。このへんが「対立」のあった所ではないかと、勝手に想像しているが、結果的には安藤の伸びやかな演技が全体を按配してまとまった舞台になっていたのは確か。同じポツドール出身の両名でも安藤はその匂いをさせない役者で、そんな印象に合致する舞台だった。とは言えやはりブス会の世界は演劇界の独自の領域を占めている。