満足度★★★
禁酒条例が出た都内の居酒屋。
酒無しの忘年会で、酔うに酔えない苛立ちと、はたまた冷静な議論とが交錯する。
施行前と後とに場面は繰り返し交代しながら、そこに集まった社員たちの人間模様が、徐々に明らかになっていく。
役者の演技も悪くない。個性的である。
そこそこ、笑いの場面で私もクスクスと、周りにつられてしまう。
戯曲を書いた人は、きっと優しい人なんだと思う。
登場人物は、それぞれがそこそこの痛みを持ち合わせ、そしてそれと同時に優しい心を周りにふりまこうとしている。
だれもが、「未完」ながらも「善良」であろうとしている・・・と、思う。
だから、見終わったときの気持ちは温かい。
しかし、しかし、やはり何か物足りないのである。
そのひとつに「社会性」を表現する姿勢がある。
社会運動に参加している社員がいる。
その動機が私には不満である。
行動自体がどうもファッションとしてしか描かれていないのだから。
やさしさが、同心円のように広がっていく。その波形のありようが社会的な行動と言えはしまいか。
劇団の描くものは、個人の趣味である。
「今は、そんなものなのよ」と言われたら返す言葉もないが。
BGMは、全て私の生きてきた「年表」に位置が確認できるほど、懐かしいものだった。
これは嬉しい。
可能性。そんな言葉が頭をよぎる。
また、温かな、そしてできれば、「鋭い」劇を、と期待。