満足度★★★★
再演というこの戯曲、お名前はよくみていたが、初・劇団チョコレートケーキ。
有名な独裁者の彼を中心に周辺の人々が描かれる。
私は、狂信的に誰かに服従するといった経験が無いが、あの渦の中に取り込まれた人間が実際に大勢居た事実。
タイトルのまさに「熱狂」という単語が言い当てていて、怖いし、一歩間違えると自分だってそういった国や、団体や、人間と接触することがあるかもしれない。
ただ、傍観している自分は、ストーリーテラーのリシャルト・ビルクナー(浅井 伸治さん)の最後の演説を見つめる切ないような、辛そうな、寂しそうな表情が印象的だった。
「壊れていく」「間違ってる」と感じている人がいる一方で、「熱狂」して、止める事が出来ない進み方をしてしまったヒトラー。
そして、その周りの人々。
遠い歴史の話かもしれないが、そうとは言えない話。
ヒトラーと同じ方法をする、情報を操作したり、難しい事は大衆には伝わらないが分かり易く伝えると支持を得る。
これは、物凄く、リアルである。
例え、その人が間違った思想だとしても、人々は熱狂すると思う。
ヒトラーを取り巻く人間が自分の感情を表だって見せない騙し合いのような中、人間臭い、血が通ってる感が良かったのが大原研二さん演じたエルンスト・レーム。
ヒトラーの古くからの同志。
彼は、粗野な感じだが、一番、温かさを感じた。
ハーケンクロイツを使った舞台美術が縄のような、和紙のようなタペストリーのようになっていた。
下手でエルンスト・レームが壇上で話す時、そのシルエットが映し出されて、物凄く、照明も綺麗だった。
今年最後の観劇がこの作品だった。善き観劇納めとなった。