断罪 公演情報 劇団青年座「断罪」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「新劇系」に書き下ろした中津留作品、以前民藝に書いた舞台は、中津留節の生臭さが新劇系演技によって緩和され、良い具合にリアルでメッセージ(作者の意図)の伝わりやすい舞台になっていた。
    今回も同様のことが言える。
    難点も多々あるが、主人公に課せられた正論をごり押しに叫びまくる役が、中盤までの「浮いた」(役の人物的にも俳優の演技的にも)存在から、最後には、そうする以外に手がない業界の惨状をそれよって表現していたのだ、と周囲に納得させることになる。つまり、あの男のようにガナり、叫び、語りかける事によって辛うじて、無残な現状の「無残さ」に見合う。その事に気付けよ、という作者の直の声が、役者を通して叫ばれている。確かに、その通りだ、と私は思う。

    ただ、この芝居にもユートピアが描かれる。叫ぶ男のアクションに対して、「怯む」という受けの芝居で周囲の社員が男を立てる。観客から見ればそれによって男は救われる。また一方のヒロインの正義を貫こうとする女性社員の「涙」も見事で的確、貢献は多大であった。
    「芸能事務所」という場に日本の情報統制を巡る問題の縮図を描こうとする作者の執念は、勝つか負けるか、殆ど勝負に出ている感がある。同様の主題を扱った芝居が今年は「ザ・空気」(永井愛)、「白い花を隠す」(石原燃)と続いたが、今作は中津留流でこれに果敢に迫った印象だ。
    強引さはあるが、現状肯定したい人間の習性の前で、荒んだ現状を「荒んでいる」と言い切る困難に挑戦する姿勢には素直に感じ入る。現実の背景が、メタ・メッセージとしてこの芝居を成立させていた。という事は、現実をそう見ない観客には、届かないという事になるが。

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    2017/12/16 04:31

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