公演情報
「断罪」の観てきた!クチコミ一覧
満足度★★★★★
①千秋楽。今日的なテーマを、芸能事務所というフィールドで展開する設定は興味深い。政治批判や言論統制、恋愛禁止や枕営業まで話題は満載だ。その豊富な話題は好奇心を刺激するため、逆に物語の散漫さを孕んでいる気もする。話題も登場人物も整理し、リライトされた再演を観てみたい。
②沈黙は同意だ。声を出さなければ何も伝わらない。自我が強くなる中学生に気持ちを語らせるのは難しいが、言語の授業をする以上、それ無くして先へは進めない。長い時間をかけて殻を破らせる…いやこちらから割ることも時には必要になる。一朝一夕には変わらない大きな壁がある。
③人としての、会社としての、正しいあり方を問う告発者を安藤瞳さんが好演。彼女は戦うというより、人は変われると信じている人なのだと思う。だから、最後に信念を曲げる覚悟を決めた彼女は痛々しく、それまでの凛々しさはみる影もなく切ない。彼女が正当な勝利を手にしたと信じたい。
満足度★★★★
「新劇系」に書き下ろした中津留作品、以前民藝に書いた舞台は、中津留節の生臭さが新劇系演技によって緩和され、良い具合にリアルでメッセージ(作者の意図)の伝わりやすい舞台になっていた。
今回も同様のことが言える。
難点も多々あるが、主人公に課せられた正論をごり押しに叫びまくる役が、中盤までの「浮いた」(役の人物的にも俳優の演技的にも)存在から、最後には、そうする以外に手がない業界の惨状をそれよって表現していたのだ、と周囲に納得させることになる。つまり、あの男のようにガナり、叫び、語りかける事によって辛うじて、無残な現状の「無残さ」に見合う。その事に気付けよ、という作者の直の声が、役者を通して叫ばれている。確かに、その通りだ、と私は思う。
ただ、この芝居にもユートピアが描かれる。叫ぶ男のアクションに対して、「怯む」という受けの芝居で周囲の社員が男を立てる。観客から見ればそれによって男は救われる。また一方のヒロインの正義を貫こうとする女性社員の「涙」も見事で的確、貢献は多大であった。
「芸能事務所」という場に日本の情報統制を巡る問題の縮図を描こうとする作者の執念は、勝つか負けるか、殆ど勝負に出ている感がある。同様の主題を扱った芝居が今年は「ザ・空気」(永井愛)、「白い花を隠す」(石原燃)と続いたが、今作は中津留流でこれに果敢に迫った印象だ。
強引さはあるが、現状肯定したい人間の習性の前で、荒んだ現状を「荒んでいる」と言い切る困難に挑戦する姿勢には素直に感じ入る。現実の背景が、メタ・メッセージとしてこの芝居を成立させていた。という事は、現実をそう見ない観客には、届かないという事になるが。
満足度★★★★
青年座は頑固に日本の創作劇を上演し続けてきた。青年座が委嘱した劇作家は高い確率でいい作家になって、時代を画する戯曲を書いてきた。今年の古川、今回の中津留、ともに現在最も期待されている作家だ。おまけに青年座は新劇団」としては文学座と共に、「新劇団」がほとんど仲良しグループで傷をなめあっている中で、劇団活動ができる。破産していない。役者も養成できる。ともにアトリエを持ってそこでの公演できる。今回はその青年座劇場、客席200たらずのスペース公演である。劇団活動としては中津留登場は期待充分の作品である。客席は満席。芝居好きは知っている。この上演を実施しただけでも青年座は評価されるべきだろう。だが・・・
今回の「断罪は」いくつもの注文がある。
パンフによると積年の委嘱だったようだがこれは、テーマを舞台化する場の設定を誤ったのではないか。中級の芸能事務所の話だ。その事務所の代表的タレントがテレビで政治的発言をして事務所脱退に追い込まれ、そのタレント頼みの事務所経営が危うくなる。ここは商売一途とする経営者と、表現の自由を守ろうとする現場マネージャーとが対立するが、結局経営が「断罪」される。
確かに、大手の芸能事務所が勝手な我儘で芸能界を壟断しているのは事実だろう。個人の自由を束縛して人権を侵しかねない縛りを男女関係にまでかけているのも事実だろう。体を売って役をとることもあるだろうし、事務所の給与が安いのも事実だろう。しかし、それが表現の自由を犯し、創作の未来を摘んでいるというのはドラマ的な対立としては無理ではないか。
かつて、新劇団は自由に左翼賛美の演劇を上演してきた。組合をバックにした観客団体もあったがそれに支えられた新劇団の実際的なリーダーは、じつは資本家の家庭で育ったイイウチのボンボンだった。古い新劇団Sはやがて、アングラ劇団に粉砕されるが、そういうことは演劇界内のゴタゴタで、大衆はそれによって「知る権利」を失ったことなどない。芸能界の自由論議は遊戯にしかならなかったのである。今、劇中に描かれたような論議をしている芸能事務所のリアリティがない。
ベースにリアリティがないので、登場人物にいろいろ背景を設けているがそれも絵で描いたようないつもの手で味気ない。皮肉なことに、青年座の役者は、トラッシュマスターズに比べれば格段にうまい。いつもは聞き取れない台詞も多いが、今回は全部聞こえる。今日は俳優陣はあまり調子がよくなく、しきりに噛んでいたが、それでも台詞の処理の速さが違う。動きもアンサンブルもいい。役もきちんと解釈する。対立する善玉の大家も悪玉の石母田も十分うまい。大家など可哀そうな位、一語一語を生かそうとする。安藤、津田の女優陣も脇の鑑というほどにうまい。だが、登場人物それぞれにリアリティがないのでその演技も空転する。そんなにムキニなることはないのに、とつい思ってしまう。
トラッシュマスターズの役者でやったら、意外に現実感があったかもしれない。芝居と言うのは難しいものだとつくづく思った。2時間5分、休憩なし。
満足度★★★★
いいものを観られたと思う。
ある芸能事務所での不正、業界全体の問題を告発したのだが、問題が改善される方向へ行かずに追い詰められてゆく会社。
社員は沈黙し考えるコトをやめてしまう社員。
まるで私の職場みたいじゃないか!
今を演劇としている作家にこれからも注目したい。