室温 ~夜の音楽~ 公演情報 天幕旅団「室温 ~夜の音楽~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    サイコサスペンスという謳い文句通り、外面的な愛想の良さと嫌らしさ、内面(心)の暗部が浮き彫りになってくる不気味な崩壊物語。と言っても、役者の演技がコミカルに描かれるシーンもあり、この劇団らしい演出を試みた表現方法とも思える。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    挟み客席、その間に赤い舞台(絨毯イメージのような)スペース。海老沢家の居間といった所で、テーブル・椅子、ソファー、電話置台の調度品がある。また風鈴の短冊には”みちのく”と書かれている。そして殺されたサオリの写真が掛けられている。四方には椅子が置かれ、ラストに明かされる別世界。

    梗概…寂れた漁村に建つ古ぼけた洋館。心霊研究家の海老沢(凪沢渋次サン)は娘のキオリ(渡辺実希サン)と2人暮らしをしている。12年前に殺害されたサオリの命日に、刑務所から出所した犯人の1人・間宮(渡辺望サン)が訪問したことから、事件に隠された秘密やそこに居る人々の悪意や思惑が露呈していく。たどり着いた真実は憎悪か愛情か。携帯電話が繋がり難い人里離れた場所、雷雨という天候など、この屋敷は一種の密室状態に置かれている。

    何の本だか忘れたが、親を亡くすと過去を、配偶者を亡くすと現在を、そして子を亡くすと未来を失うとあった。主人公は妻が家出しており、時の全てを失ったかのようである。それでも犯人が焼香したいという申し出を受け入れ、常識では考えられない行動をとる。さらに服役したことに対する労をねぎらう言葉をかける。少しずつ物語が歪み始め陥穽を企てる様相が見え始める。ゆるやかに理性がかき乱されていく様、曲者ばかりの登場人物たちの思惑がスリリングに絡み合う心理サスペンス。全編通じて薄暗い照明(停電シーンではロウソクの炎が印象的)、その雰囲気は人心の醜面をイメージさせ嫌らしさが蠢くようだ。誰もが内心ピリピリし他人を受け入れない。そんな強張った空気をドタバタな描きにして緩衝させる。

    物語を俯瞰するかのように少年(加藤晃子サン)の心霊が浮遊している。それはサオリであり、別の子でもある。霊魂が漂っていることを表現しているが、悲壮感は感じられない。この子がサブタイトルにある~夜の音楽~を歌い出し、全キャストが唱和する。その雰囲気はあっけらかんとしている。公演全体が陰陽のメリハリを意識したような観せ方で、その印象付けは上手い。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/15 17:43

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