室温 ~夜の音楽~ 公演情報 天幕旅団「室温 ~夜の音楽~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/12/14 (木) 15:00

    素晴らしく良く出来た戯曲、これを選び演出した渡辺さんのセンス、激情ほとばしる台詞を誰一人噛まない役者陣、と久しぶりに観ていて熱くなった。奇妙なオープニング、「たま」のシュールな乾いた歌詞が異様な世界に誘う。渡辺実希さんの罵倒するシーン、圧巻の迫力!

    ネタバレBOX

    舞台中央に大きなダイニングテーブル、部屋の隅には猫足の電話台に黒電話。
    古い洋館に住む心霊研究家の海老沢(凪沢渋次)と娘のキオリ(渡辺実希)。
    だがキオリの双子の姉妹サオリの命日の日、この家には何人もの来客があった。
    毎日のように入り浸る警官(佐々木豊)、
    気分が悪いから休ませてくれと上がり込んだ図々しいタクシー運転手(竹田航)、
    熱心な海老沢のファンだという女性(もなみのりこ)、
    そしてサオリを死に追いやった4人の少年のうちのひとり間宮(渡辺望)が
    10年の刑を終えて出所し、海老沢家を訪れる…。

    実はこれら登場人物は皆、誰かを殺した、あるいは殺そうとしている。
    前半の滑らかでない人間関係の原因は、後半一気に明らかにされ、
    驚愕の事実が明かされる。
    誰かを殺したいと思う理由はそれぞれだが、“憎悪”という点で一致している。
    憎悪の理由が明かされるプロセスがスリリングでたまらない。
    これは人間を犯罪へと突き動かす最も強い原動力である“憎悪”のたぎる芝居である。
    たぎる芝居だから皆よく吠えるのだが、吠え方がまた良かった。
    切羽詰まった、あるいは追いつめられた、あるいは他の手段を思いつかないほどの
    “憎悪”を懐に持つ登場人物たちの陰影が素晴らしい。

    渡辺実希さん、ここ何作かで暗い感情をむき出しにする役に磨きがかかった感じ。
    最初に間宮を罵倒するシーンは圧巻の迫力。
    佐々木豊さん、笑いを誘う前半のコミカルなイメージと、
    後半一転して狂気を爆発させるシーンとのギャップが素晴らしい。
    渡辺望さん、元不良少年だが、ピュアな部分も持ち合わせている間宮を演じた。
    犯人にもかかわらず思わず好感を抱いてしまうのは、
    犯罪者でありながら一番普通の感覚の持ち主に見えることのほかに、
    渡辺さんの素の品の良さも理由のひとつだろうか。
    抽象的な犯行理由が、あとから説得力を持ってじわりとにじみ出して来る。
    加藤晃子さん、以前ほどの少年っぽさはないが、浮遊する不思議な存在感がある。

    もなみのりこさん、偽名を使って海老沢に近づく女の表裏が上手い。
    竹田航さん、観ている方がイラつくほどのうざいキャラ。
    ハイテンションで隙なく演じていて巧み。

    ケラさんは、こんなダークな本も書くんですね。
    軽い笑いを入れながらずどんと落とされた感じでとても見応えがあった。
    天幕旅団の底力を見た思いがする。


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    2017/12/14 23:41

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