星の記憶 公演情報 アンティークス「星の記憶」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    日常の暮らしの中にある細波と細濁りを交えて描いた物語。家庭・仕事・恋愛など多くの人が経験するような内容をごくありふれた展開として観せる。そこには孤独、絶望と希望という心情が見え、記憶として刻み込まれる。「星の記憶」として俯瞰した観方は観客の心にも刻み込まれる。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    物語は家庭内や職場(高校)、恋愛を入れ子構造にしているが、捉え方によってはオムニバスのようにも観える。その話を紡いでいくセットは、上手側手前から下手側奥にかけて斜めに仕切った細い紐状(モール)のようなカーテン。下手側にはテーブルイメージの置き台と椅子。

    須田家は夫婦と娘2人、野島家は夫婦と娘1人、それにシェアハウスの人々という3つの話が交錯するように展開するが、その中でも須田家の夫・源(林隆三サン)を中心に据えている。夫婦・親子関係という坦々とした流れや職場の進路指導という重々とした内容を交えることで”情”という味わいが感じられる。父親としては娘の結婚話、職業人(教師)として問題行動を起こす男子生徒の指導など、色々な面で心労が絶えない。一方、野島家の夫婦はそれぞれ相手が不倫していると疑っている、そんな仮面夫婦である。さらにシェアハウスの女性3人がその年頃に相応しい世間話や恋愛話のお喋り。

    全てが等身大で、どこにでもありそうなシチュエーションが観客の身近な問題として迫ってくる。一種のドキュメンタリーを観るかのようなリアルさ。登場人物の視線が交錯し、些細な日常に潜む高揚・諦念などを感じさせる。気付けば自らの日常が侵食されていく錯覚に捉われる。

    源の過去回想に登場する小学校教諭・綾瀬春世(中沢志保サン)が児童養護施設育ちであることから差別的な扱いをされ、学校を辞めざるを得なくなる。
    物語に通低して観えるのは、一段と不透明感が増し不寛容になっていく日本社会が浮き彫りになるようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/09 16:28

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