みごとな女 公演情報 SPIRAL MOON「みごとな女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/11/12 (日)

    座席1階1列5番

    価格3,500円

    ほとんど事前知識ないまま寄った,板橋のマンション地下は凄い感動の世界だった。

    ネタバレBOX

    化学が強い女は,研究者になっても良かった。しかし,そこまでの才能や展望も,あるいは決意もないまま普通の生活に戻ろうとした。しかし,化学に興味があり,薬学の知識を役に立てることはできても,裁縫やら,女らしい料理にはなじまない。

    そんな彼女が,その欠陥やら,特性ゆえに二人の結婚候補から求愛された。ひとりは,将来有望な温厚な医師であり,こちらは日は浅いが,すっかり夢中になった。才気煥発で,医学的方面で良きチームが組める。

    しかし,いままでずっと身近で彼女を友として来た年若い男は困惑する。自分は先行きのわからないドイツ文学者だ。ピアノでは彼女に指導もできる。だが,彼女を本当にしあわせにできるのは,果たして自分なのだろうか。

    彼女自身やら,彼女の母も多少の迷いはある。こころは,若い詩人であろうが,しかし,にわかに現れた社会的地位に優れた医師にこそ娘は嫁ぐべきかもしれない。この医師も本当は絵描き志望だったが父親にその志をつぶされた過去があった。

    主要四人の思惑,ひとがら,人生観,相手に対する優しさ・配慮,そういうものがいくつも浮かんでは消えていく。

    背景は,明治時代であろうか。だから,価値観も今とはちがう。そうは思うし,かつて支配したある種の結婚観とか,家庭に対して望むものが,やや色あせてみえるが,でも良い演劇だった。

    ひとの心理分析,表現,表情が良かった。全体的に静かな気品が漂い,最後は,たぶん『みごとな女』を失うであろう片方の男性があわれで泣けた。感動的で,非常に印象に残る名作だと思う。

    漱石『心』は,同じ女を奪いあう後味の悪い悲哀があった。こちらの方は,誰もがしあわせを願いながら,結論は一人の花が誰かのものになっていく点では共通なのかもしれない。

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    2017/11/12 21:23

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