父母姉僕弟君 公演情報 キティエンターテインメント「父母姉僕弟君」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「私が亡くなったら(妻を)娶ってね。だけど私のことは忘れないでね」という遺言は、優しいようで、実は意地悪もしくは残酷のような気もするが…。生前の君との約束を果たすため旅に出るが、その旅路で出会う人達を通して”想い”が溢れ出る。
    (上演時間2時間10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、寄木細工のような壁面。板上はいくつかの椅子があるのみ。状況によってそれらを車や遊園地に見立てる。ほとんどは役者の演技力による状況描写である。

    物語は、妻を亡くした男 明夫(亀島一徳サン)は、妻・天球(島田桃子サン)との思い出の地を目指して旅をする道中、奇妙なキャラクターたちと出会ったり別れたりを繰り返し、家族をつくっていく。忘れそうになる記憶の中の妻を思い出しながら、約束の場所を目指す…というもの。その観せ方は、家族をエキセントリックに描くことで、身近な存在から距離を置き、非日常的な存在に置き換える。その客観的な見方を通して「家族」という絆(擬態、腕のギミックなどを用い)、その普遍性を浮き上がらせている。

    ラスト…壁が閉じられ、明夫が胸の内を激白する。バットで壁の一部を壊し、改めて壁が開かれた先にあるのは大木。その根元には役者が座っている。天球が現れ、これは鳥の家族だという。今まで回想した人物(腕も含め)、動物との”絆”を色々なシーンに組み込み”生”に関連付ける。

    さて、”死”の恐怖について、本当は人から忘れ去られることともいう。死者は死んではいない。別のところへ行くだけ。生者は自然や現実とは異なる時空に死者を住まわせ、いつでも対話できると思うことによって死者と魂を通わすことが出来る。しかし、娶った新妻は、夫が何時までも亡妻を想っていたら…それを強要するような遺言は酷のようにも思えてしまう。

    物語は、寄木細工を組み立てるように段々と姿・形が明らかになってくる。その収束していく過程が面白い。亡くなった妻との思い出を回想するうち、過去・現在・未来、そして父・母・姉・弟との関係性を縦・横軸として絡ませ、シュールに切り張りしながら新たな家族像を描く手法は見事であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/11/06 17:54

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