MTF 公演情報 トランス☆プロジェクト「MTF」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    牧歌的な風景を残した地方都市、その地元高校に集う学生たちの青春群像劇。テーマの訴えは弱く表層的とも思えるが、その内容も含め、青春時代の恋愛・希望・懊悩などを高校時代から20歳代後半までの10年余にわたる時間を生き活きと描いている。”とどかない言葉”は、青春時代だけではなくどの年代にも共通したもどかしさがある。その象徴的とも思えるような言葉が随所で聞かれる。

    テーマに拘って観るというよりは、この悩みの特別な見方・扱い、その考え方に一石を投じるというところに意味があるように思えた。それは地方という閉鎖的な環境・状況ということではなく、日本の社会全体の風潮のようで、その縮図を描いているようだ。
    本公演は、平成29年度(第72回)文化庁芸術祭参加公演。
    (上演時間2時間) 2017.11.1追記

    ネタバレBOX

    セットは2階部を設え、上手・下手側に階段がある。一階部の中央に両開きドアがある。物語は2007年と2017年を描いており、その間の出来事は特に描いていない。

    物語は、ある地方都市にある野球強豪校における野球部員と彼らを取り巻く人々(女子マネージャー、チアリーダー部など)の高校生活。甲子園まであと一勝というところで出場を逃した高校球児。そのエース・ミツオ(成瀬正太郎サン)が野球部内の余興で演じた女装姿から、自分が性同一障害(トランスジェンダー)ではないかということに気付く。自分自身の戸惑い、自分に好意(恋心)を持っているチア部のテイ(笠原千尋サン)との関係を微妙な距離感をもって描く。

    ミツオの内面的な葛藤は、真に悩んでいるのか、そして自分に正直な気持を受け入れているのか、その過程が弱いのが残念。それは2007年の気付きと2017年の今の生活(BIDの人が経営しているBar)という間隔が、先に記した懊悩する過程を省略したためだと思う。むしろ、青春期の色々な悩み事の一つに性同一障害があると捉えた方が分かり易いように思えた。確かに自分の周りでもその悩みを聞いたこともなければ、もちろんカミングアウトされたこともない。しかし、性同一障害の悩みは第一には当事者の問題。そのことへの偏見的な見方、行為は社会の(風潮)問題。本公演では当事者の内面苦悩ゆえ、その表現を伝えるのは難しかったと思う。逆に偏見的意識、その社会的な視点から描いた方が分かり易く、問題意識の提起になったと思うが…。

    主人公を男らしい高校球児から大人になって女装する姿、表層的に悩みを見せようとしているが、むしろ第三者(高校時代の仲間)の好奇な眼差しが不安であり怖いという描き方である。地方で生きづらさを都会という雑踏の中に埋もれることで生きられる。

    ミツオはバッテリーを組んでいたフジ(南川太郎サン)が自殺し、その葬式に参列するため故郷に帰る。なぜ自殺することになったのか、その理由も曖昧のまま。都会(人の関わりの希薄)と地方(顔見知りが多く濃密)で生きる術(すべ)の違いを表したかったのか?ラストシーンは余韻ある印象付けしていた。
    この難しい生き方(性同一障害および大都会・地方都市の生活)の表現をアニメにしたチラシが象徴しているようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/10/26 17:56

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