JOE MEEK 公演情報 ピストンズ「JOE MEEK」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    音楽を宇宙へ飛び立たせることを夢想した男、ジョー・ミークの半生を描いた秀作。ビートルズ以前のイギリス音楽業界を席捲したそうだが、自分は知らなかった。しかし、物語は当時の音楽業界の事情を男の目を通して分かり易く描いており、1950年代後半から1960年代初頭にかけての音楽業界史を観るようだ。
    脚本(広瀬正人氏)、演出(小林涼太氏)と演技(特にジョー・ミーク役の島岡亮丞サン)、美術・照明の絶妙なバランスの良さ、そして「目に見えない緊張と迫力」がみなぎっている舞台であった。
    (上演時間2時間20分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    セットは、中央に段差のある四角いスペースを設え音楽スタジオをイメージさせる。上演前は椅子が一つ置かれているだけであったが、直ぐに机・電話、音響機器、ラジオが持ち込まれる。四隅にポールが立ち、コードが巻き付いている。下手側には固定梯子、二階部はレコーディングルームのような別室。

    音楽業界における典型的な栄枯盛衰物語のようである。物語は時代という生き物をどう乗りこなすか、その先見性の見誤りを諌止するような場面もあるが、その通俗性よりも主人公ジョー・ミークという一音楽家・プロデューサーとしての人間性、その魅力(破滅的な面も含め)に主軸を置いている。

    物語は、ロックンロールの神様的な存在バディ・ホリーが死んでロックンロールは終わったと…そんな呟きから始まる。しかし、ジョー・ミークはロックンロールの復活を夢見、精力的に活動を開始する。そして彼の情熱によって目指す音楽の極みに辿り着いたが、その景色をずっと眺めていることは出来なかった。目的を達成するため、自己本位で自分のことしか考えないなど強引な活動スタイルは、仲間との軋轢を生み次第に歯車が狂いだす。人間の嫌な面…嫉妬・反発・怒り・焦り、そして色恋沙汰(当時としては問題の同性愛)などを描くことによって、彼(心情)の衝動、葛藤が浮き彫りになる。

    演技、ジョー・ミークは中央のスタジオに上ったり、走り回ったりいつも忙しく動いている。逆に仲間や周囲の人間は普通(淡々)の動き。その緩急の動きに、彼の生き急ぎ、焦燥・苦悩・悲哀が見えてくる。時々挿入されるダンス、そのアンサンブルも観応えがある。
    気になったのは、音楽の世界でありながら生演奏・歌が聴かれなく、その部分はリップシンクで処理している。全ナンバーでなくてもよいが、少しは生で聴いてみたかった。脚本の面白さ、演技の力強さに惹かれるが、一方、見せ場となるであろう音楽シーンが物足りなく思えてしまったのは残念。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/10/20 18:51

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