囚人 公演情報 Oi-SCALE「囚人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    フライヤーの“何かが起こる前の”緊張感溢れるビジュアルからして
    もうすでに不穏なムードが漂っている。
    あっと驚くラストの展開と、そもそもの設定に完全にやられた感じ。
    期待通りのセンスの良い映像と、思いがけなくアナログな演出が同居する
    林灰二ワールド。
    村田充さんが圧倒的な存在感で魅せる。こういう芝居をする人だったのか。

    ネタバレBOX

    舞台には3枚の白い幕が吊るされ、中央の1枚は半円を描いている。
    この半円がくるりと回転すると場面転換と出ハケがなされる仕組み。
    複数のエピソードの登場人物の名前が、その幕に映し出されたりする。

    舞台はとある病院の花壇がある中庭。
    一日の大半をここで過ごす男、太郎(村田充)。
    毎日太郎を見舞う友人、ハルキ(林灰二)。
    そして太郎に“どのくらい死が近づいているか教えて欲しい”と訪れる人々。
    本当は知りたくない“自分の寿命”を聞きにくる人々の、葛藤や家族関係が描かれる。

    いわゆる人知を超えた能力を持つ男を取り巻く“死のエピソード”が綴られるのだが
    途中、作・演出の林灰二さん自身の、素の語りが入るのがユニークな演出だ。
    林さんの父親の「鳥を捕獲して鳴き声を競わせる趣味」のことを話したり
    「僕は神様だから」役者に台詞を言わせ、自由に設定を考える…と語る。
    そして「これも全部台詞です」と言って観客を混乱させる。

    この「神」は最後に、驚愕の設定を明らかにして物語を終える。
    林さんらしい、何気ない電話の会話で。
    実年齢から想定する観客の思い込みを軽々と超え、
    物語を最初から語り直すほどの力技で真実を提示する。

    主演の村田充さんが“死の匂いを嗅ぎ取る男”を淡々と演じて圧倒的な存在感を見せる。
    この長身長髪の謎めいた男を、徹底的してミステリアスにスタイリッシュに描くと思いきや
    素の作者が「僕は何でもできるんですよ」なんて言った後で、驚きの事実を告げるものだから
    観客は改めてこの芝居を冒頭から反芻する、「そうだったのか」と。
    そして村田充という人の“年齢不詳”な演技を再評価する。

    がん患者の男を演じた伊藤慶徳さん、その弟で聾唖の少年役の中尾至雄さんの
    エピソード、ハラハラするような空気が生まれて強い印象を残した。

    「自分の匂いに気が付かない?」と太郎に語りかけるハルキ、
    何があっても決して狼狽しないハルキは、やはり「神」なのだろう。
    相変わらず「神」は雄弁で、お見通しで、自由奔放であった。

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    2017/09/30 01:10

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