夕凪の街 桜の国 公演情報 “STRAYDOG”「夕凪の街 桜の国」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    この公演は、2016年の映画界の話題作「この世界の片隅に」の作者 こうの史代 女史の漫画「夕凪の街/桜の国」が原作。他の劇団公演を観たことがあるが、その時は特定した情景・情況を出現させるセットであった。時は流れて、”戦後”と呼ばれるようになっても、原爆投下された地続きは過去と現在を切り離すことはできず、今なお苦痛と苦悩と悲しみの中にいる。セットは、簡易で場面に応じて変更するが、観ている観客に固定した情景・情況を示すのではなく、あくまで観客の心情に訴え心魂を揺さぶるもの。
    原作は、夕凪の街、桜の国(一)、(二)の3部構成。この公演は「桜の国(二)」から「夕凪の街」へ回想し「桜の国(一)」を挿入するような構成である。
    一度は観たいと思っていた "STRAYDOG"Produce、森岡利行氏の脚本・演出公演は十分堪能できた。
    (上演時間2時間) 2017.9.27追記

    ネタバレBOX

    肉親の墓参りのため広島へ...”心の旅路”を思わせる展開であるが、感傷に浸らせるばかりでなく、明日・未来に向かって力強く生きようとする人間讃歌として描く。
    セットは、正面の手摺または橋げたを思わせるようなもの。上手側に長屋家屋、下手側にお好み焼き屋を出現させるが、あくまでイメージ。また旅路を思わせるため、役者が客席内の通路・階段を歩き移動している様を見せる。

    戦後の混乱期、落ち着き出した昭和20年代末から昭和30年代にかけての広島市内、そして現在の様子を父・娘の会話を通じて紡ぐ。会話の端々に過去(戦後間もない頃)を挿入し、過去から現在へ時は流れて”命”も脈々と受け継がれる。その生命に原爆の恐怖が刻まれ、今も闘い続けなければならない慟哭が涙を誘う。

    梗概…昭和30年夏、平野皆実は建設会社の事務所で働き、原爆スラムの家で母親のフジミと暮らし、疎開先の養子となり茨城県で暮らす弟・旭に会いに行くことを望んでいる。現在は平凡な社会人として過ごしているが、いまだに広島での被爆体験を自分の中で消化し切れない皆実。ある日皆実は、同僚の打越豊からプロポーズを受けるが、原爆の日の光景が蘇り、助けを求める大勢の人々を見捨てて逃げようとする罪悪感が付きまとう。
    皆実は、自分の被爆体験を打越に打ち明ける。打越は皆実の気持を察し皆実は安堵するが、その日を境に皆実は体調を崩す。やがて自分の状態も周囲の状況も分からない。皆実は死の床で、あの日、自分たちの死を望んで広島に原子爆弾を落とした人は、また一人殺せたことを喜んでいるか自問し、自分は生き延びた側だと思ったが、そうではなかったと独白する。この夕凪の街を中心に、成長し娘がいる旭が広島の知り合いを尋ね、また墓参りをする。父の様子がおかしいと娘が尾行するが…。

    ここでは、政治的視点ではなく市民の視点、普通の人の情感を坦々と描く。だからこそ遠い出来事ではなく、身近に寄り添っているからこそ感動を誘う。
    先日(2017年9月24日)、広島市の原爆資料館の類計入館者数が7千万人に到達した新聞記事を読んだ。オバマ前米大統領が訪問し外国人らの入館者も増加したと...決して忘れてはならない原爆・戦争をである。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/09/27 19:31

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