ニコニコさんが泣いた日 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「ニコニコさんが泣いた日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    戦場も戦闘シーンもない反戦物語。切ないほどに戦争の不条理が観えてくる秀作。この劇団が幾度となく再演をしており、その理由(わけ)が解るような気がする。
    第29回池袋演劇祭参加作品であるが、会場は新宿区にあり自分は初めて行った。繁華街を少し外れるが、戦時中とは隔世の感があると思われる場所で芝居が観られること、その平和のありがたさをしみじみ思う。
    物語は、戦時中の猛獣処分という史実をモチーフに、叙情豊かに描いており観応え十分である。 
    (上演時間1時間45分) 2017.9.27追記

    ネタバレBOX

    舞台背景は、戦時中の上野動物園。そのセットは中央に客席側に斜めに傾いたサークル。周りに部分的に柵イメージ。上手側に台部分が色鮮やかな別スペース。天井には運動会で見られるような三角旗が飾られている。猛獣処分は動物園の動物だけではなく、サーカス団の動物も対象であったことを舞台セットで暗示する。

    地球上には多くの動植物が生息しているが、その生の与奪に人間の行為が大きく影響している。公演では、ゾウ・ライオン・ワニという動物(擬人化)を登場させ、野生から飼育になり生きる本能(捕獲)を奪う。集客目的、餌をもらうために必死に芸(野球)を行う動物たち。その悲哀に満ちた姿が感動を誘う。
    一方、動物園の職員も殺処分を何とか回避または他の動物園に引き取ってもらえるよう運動を始める。その運動には当時の状況下において非合法とされた活動を始める者も現れた。特高警察の取締りの苛烈さ、収監し暴行等するシーンは動物の無邪気な様子、職員の真摯な姿と対比させ戦時下の状況を浮き彫りにする。

    反戦を声高に叫ばないだけに、よけい戦争の非情さが見えてくる。その結果、ライオン、ワニの毒殺、ゾウの餓死(敏感で毒薬を嗅ぎ分け、注射は皮膚が厚く無理)という手段で処分する。動物たちは、職員の苦悩を知っているようで処分を受け入れる。そのシーンは静謐なまでに美しく感動的である。

    演技…他の動物園に引き取ってもらえるよう奔走する。その走る姿が緊迫感を生み、テンポよく展開する。公演は動物園に通っていた美大生の観察日記のようにも思える。失明し心で見たラスト…死んだ動物と職員全員が再登場し、楽しかった日々を思わせるシーンは、この世のデストピア、あの世のユートピアを思わせホッとさせる。それを音楽…デストピアは低重音で響かせ、ユートピアは軽音楽に変化させ、見事に昇華させた!

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/09/27 19:17

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