クロス ~橘耕斎ヘダ日記~ 公演情報 Re:Duh!「クロス ~橘耕斎ヘダ日記~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「戸田日記」を回想するという劇中劇として描く。公演は世界観を広げすぎず、幕末という時代、鎖国さらに村という閉鎖性のなかで、異国(ロシア)人が漂流してきたことで戸田村の日常の暮らしに変化、刺激という状況が生まれたことに集中させる。時代閉塞の現状に当時の人々の考えや思いを巡らす描き方。
    素舞台であるだけに、その情景を観客一人ひとりが想像し世界観を作り上げる。一方、人の心情は登場する人物によって夢と今後の生き様が語られる。
    脚本・演出の大倉良介氏は当日パンフでタイトル「クロス」について、公演に関わった人々への御礼のような言葉として書いているが、自分は「時代と人の関わり」を掛け合わせているような感じを受けた。
    いずれにしても幕末の史実を基にした歴史考察作品は観応えがあった。
    (上演事件1時間50分)2017.9.28追記

    ネタバレBOX

    舞台はほぼ素舞台。中央に段差があり、引戸の開け方で板戸と障子になる。その違いが場所の違いを表す。上手側に別スペースを設け、書斎風または牢屋を思わせる。
    素舞台であるだけに、登場人物が情景・状況を表現しなければならない。そのテンポが一定のようでメリハリが少ないように思う。また場面を動かすために暗転または薄暗くが多用されていたのが残念。

    梗概…時は幕末、ロシア軍艦ディアナ号が大地震・津波で駿河湾に沈没する。それを助けたヘダ村の人々とロシア人の交流。また造船を通じて日本がその技術を学んでいくこと。さらには当時の鎖国政策で外国との接点が制約されていたことなど、歴史的事件をベースに、そこで活躍した橘耕斎という人物に焦点を当て、人としての夢や希望を語らせる。そんな歴史考察作品は観応えがあった。言葉は通じなくても心は通う、その瞬間に人の思いを感じる…今の世でもそうありたいと願うもの。

    夢や希望は、大きく観れば”時代閉塞感の打破”ということであろうか。世界を変えるには世界を知ること。その言葉に従い、外国(ロシア)への密航を企てる。一方、もう一人の重要人物・沢辺琢磨は目で見たことしか信じない。目に見えない”神”は信じるに足りない。見えるものだけを信じていると目先に囚われ多くの人の事が分からない。心眼が大切と説いている様な…。後々の日本人初のロシア正教会司祭となる。
    時代と個人(市井の人々)を対置させながら重層的に描いているが、その物語は時の経過を坦々と描いているようだ。

    この地には、日本史の教科書または参考書にある江川英瀧という代官が有名であり、その人物との関わり、またロシア語はオランダ語を通じて日本語へという重訳の苦労、造船技術の違い(竜骨・肋木の構造)など、メリハリを利かせる場面があると思う。
    確かに、いくつかのシーンの台詞にもあったが、その苦難が見えてこない。
    歴史考察であれば、鳥の目のように俯瞰する時代と、虫の目ように地を這うように観察する時間が融合されたダイナミックなものが…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/09/25 17:11

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