しろつめくさ の、はなかんむり 公演情報 teamキーチェーン「しろつめくさ の、はなかんむり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    終演(千穐楽)後、作・演出のAzuki女史から、この作品には粗筋がないと…。そして当日パンフにも「フライヤー、題名、「ありがとう ごめんなさい」の二言のみに作品の思いを込めました」とある。自分の感覚からすると「ごめんなさい ありがとう」と言った印象である。言葉とは不思議なもので、その並びによってイメージが違うように、物語の展開も同じではないだろうか。
    「損得勘定」という言葉を聞くが、「損」は「得」よりも気持が後に引く。「得」はいつの間にかそれが当たり前になっている。公演も「笑い泣き」といったように、先に笑わせ弛緩させておき、泣きでギュと心を締め付ける感情で印象強くなる。主人公の生き様を考えると、「ごめんなさい ありがとう」という順がシックリとくる。そんな心魂が揺さぶられる物語であるが、自分は2020年の現実的なことを想起した。
    野草に目を留める静かな行為に、様々な命が形作られる。この世のかけがえのなさ、又は無常を思わせるような珠玉作。
    (上演時間1時30分) 2017.9.23追記

    ネタバレBOX

    セットは、上手・下手側にベンチのようなもの。やや下手側奥に野草が生えている。不思議な壁面に蔦が巻き付いており、全体としては公演イメージ。ここで暮らしているホームレス達の坦々とした生活が物語の中心、そして主人公ヒカル(マナベペンギンさん)の熱誠が感動を誘う。

    2020年の東京オリンピックを前にホームレス対策を講じたものを想起したが、Azuki女史に確認したところ違うという。パンフには「其々のスタイルで観て、其々の視点で見えるモノが生まれ、伝えたい言葉が産れて欲しい」と書かれている。作品の底流にあるのは理由(わけ)ありの人々の視点から見た、人の温かさ優しさをしっかり見つめたもの。その受け止め、感情は観客によって様々であろう。

    公演では、普通の人々がどちらかと言えば悪者のようになっていく奇妙な描き。常識と思われるような気持が、ホームレスへの優越、憐み、偽善のように映るから嫌悪感、悪意ある者になってくる。”小さな幸せの積み重ね”…大きな政策(行政)的観点で捉えると、人間にフォーカスした物語の繊細さが見えてこないようだ。

    公演全体は、詩的な雰囲気を漂わせ、感情的な表現を前面に押し出してくる。例えばヒカルは発達(知的)障害があり、話が出来ない。その彼が”しろつめくさ”を無言で差し出す姿。純粋な仕草は、ヒカルの人生の厳しい現実から引き離す役割を果たし、隠喩的で夢のような世界観を見せる。ラストシーン、見るのが辛い場面を浄化するようだ。ヒカルは台詞がない、その沈黙が逆に純粋、真摯さを浮き立たせる。

    公式パンフは三つ折り…Azuki女史によれば過去・現在・未来を表しているという。ヒカルのこれからに光が、そんなことを願いたい。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/09/20 17:17

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