満足度★★★
座席1階D列8番
今年冒頭にメロン農家が舞台の劇を観て、いわゆる農家モノ作品も作り方によっては優れものになるなぁと思っていたが、今回栃木のかんぴょう農家が舞台の劇という案内を読んで、さてかんぴょう農家のどんな一面をどう料理した作品なのか興味が湧いてきて観に出かけた。もちろん、スタート9年目の劇団であるそうだが、観るのは初めてである。
舞台は、栃木県にあるかんぴょう農家の川上家。農家を守る長女・夕子、芸能界に入りたくて家を出、最近急に舞い戻ってきた次女の夏実、小学校の教師である三女の苺子。家族を捨てた母親への思いをきっかけにひびの入った次女夏実と有子の感情的葛藤を核に、夏実の元恋人や苺子に恋する男性、アル中から立ち直って村おこしに協力する男などを巻き込んで、村おこしのイベントである音楽祭開催日を中心に描いた悲哀劇。夏実の心臓病と苺子の急死によって、夕子と夏実にかつての姉妹愛が戻ることになる、その過程が観る者の心を悲しみに包む。
そうした悲しみに清涼剤のように時折観客に笑いを起こさせる地域おこし協力隊員の存在は重要であり、なかなかの妙演であった。
役者個々の役作りの深みに欠ける面があったのは残念だが、総じて言いたいことは観客に伝わっていたと思う。
笑わせどころ、泣かせどころは、よくツボを押さえていた。
舞台と音楽との関係性にも、さらなる研究が必要かもしれない。