バルバトス 公演情報 TABACCHI「バルバトス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    当日パンフに戸田武巨氏が、本公演はアーサー・ミラー作「るつぼ(坩堝)」(邦訳題)が下敷きで、本来その上演は4時間超の大作であるが、2時間強の抜粋作品にした旨、書かれていた。この上演権は高額で小劇場ではなかなか上演できないらしい。舞台は薄暗く、全体的に不安・不穏な雰囲気が漂い、ある種の息苦しさが圧し掛かるようだ。
    (上演時間2時間15分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    当初は素舞台であるが、場面に応じてベット、テーブル、机等のセットが運び込まれる。自分なりの場幕イメージは「信仰」「生活」「裁判」「神魂」といったところ。全体の構成は次の通り。

    ●第1幕-パリス牧師寝室
    時代は17世紀中頃。
    深夜の森で、少女アビゲイルたちが全裸で踊っているのを牧師のパリスに発見される。この行為は神への冒涜とみなされ、少女の一人で牧師の娘ベテイが意識不明となる。町の有力者夫妻が「悪魔を呼んだからだ」と言い、悪魔払い牧師がか来る。そして町のさまざまな問題が露呈し、少女たちは町の人々を魔女として告発する。

    ●第2幕-プロクター家居間
    アビゲイルらは聖女扱いとなり、町では無実の人々が次々と逮捕、処刑される。プロクターはアビゲイルとの不義のため妻と気まずい関係にあり、またパリスが気に入らず教会に行かないことを指摘され、魔女の嫌疑をかけられる。しかしプロクターは、魔女告発の一人である下女の言動から少女たちに疑惑を抱く。

    ●第3幕-法廷控室
    プロクターらは判事に妻の赦免を願い出る。そしてプロクターはアビゲイルと対決する。少女たちがプロクターを魔女と告発する騒ぎになり、プロクターも拘引される。あまりにも不条理なやり方に憤る。

    ●第4幕-牢獄独房
    街は多くの人が入牢したため、家畜が町をさまよい、収穫もできず混乱が続き魔女裁判はおかしいと人々が気付き始める。身の危険を感じたアビゲイルは失踪する。裁判の正当性と保身のため、プロクターに魔女の告白をさせ、その代償に今朝の処刑を中止すると持ちかける。家族への愛から偽りの告白をする。また判事に説得され供述書にも署名するが、市民に署名を見せると聞いて良心の呵責に耐えかね、供述書を破り、従容と朝日に輝く処刑台へ上って行く。

    悪魔の存否が法の裁きになじむのか。その証拠云々を叫ぶが、目に見えない若しくは存在しないものを証明するのは難しい。それこそ「悪魔の証明」そのものではないか。公演では、悪魔という人の心に棲む邪悪、邪心その存在であるかのように描いている。少女たちの偽証がいつの間にか当時の社会状況や状態の綻びを切り裂くようだ。その陥穽によって、主人公プロクターは絶望的な状況下に追いやられるが、それでも人間としての尊厳を失わない姿に感動する。物語の通低・背景にある宗教・法律・生活の不可分、その切り離せない(悪弊)関係を重厚に観せている。

    舞台の雰囲気は、電気もない頃の蝋燭火に照らし出されたような薄暗さ。暮らしの小物や人々の衣装にも時代を感じさせる。全体的に丁寧な作り込みだと思う。
    役者は登場人物の性格、置かれた立場、状況をしっかり体現していた。その個々の演技tと全体のバランスもよく迫力に満ちていた。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/08/21 20:24

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