秋心SUMMER 公演情報 宰団紡人企画「秋心SUMMER」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    損得勘定という言葉があるが、この「損」と「得」の順番が大切である。損した気持は得した時よりも気持を引きずる。この公演では「笑い泣き感情」を見せる順番が上手く、観る人の感情の落差を大きくすることで、物語の印象を強くし余韻も残した。
    物語は富山県に実在する冠婚葬祭場が舞台のようだが…。
    (上演時間1時間10分)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    セットは、中央に柩、左右に黒椅子が並べられている。中央奥に扉があるが火葬炉前をイメージさせる。シンプルな作りであるが、物語を観せるには十分である。

    梗概は、川でぬいぐるみ(自分は「黒猫」だと思うが)を拾お(助けよ)うとして溺死した。まだ16歳で、本人は死んだことが自覚出来ていない。上演前から柩に横たわり、時々寝返りをするなど生きているよう。その動きは死んだ自覚がない証であり、まだ生きていたいと思う気持の表れでもある。親族、学校関係者(担任教師、友人など)が参列し、悔やみの言葉を述べることで、徐々に死んだことを自覚してくる。その過程を面白く笑わせているが、参列者が焼香しつつ故人への想いを告げるシーンは、一転泣かせる。まだ高校生という若さ、親より先に死ぬなど現実であれば滂沱するところ。

    叔父の「無駄死にという言葉はあるが、無駄生きということはない」という台詞に胸が締め付けられる。もちろん主人公の姿は見えない。それに対し参列者はいろいろな思い出を話しだす。死者の聞こえざる声と参列者の声をシンクロさせる、その手法自体はありふれている。しかし、記憶の中の死者は死んではいないとも聞く。葬儀で死者の生前のスライドを映し出す…という斬新さ。そう言えば、この会場はもともと結婚式場で、天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。葬儀の重苦しさはない、むしろサッパリと笑い泣かせる秀逸さ。

    葬儀社の新人とベテラン社員の会話、坊主の読経など脇ネタでも笑わせる。この葬儀一連の進行が物語の展開そのものである。ラスト、主人公が火葬炉へゆっくり歩く姿は感動的。その時に流れる音楽、演出効果は見事であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/08/21 19:20

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