PTA 公演情報 ホチキス「PTA」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    本来の「PTA(アソシエーション)」の親(P)・教師(T)・会(A)の略がアトラクションに思えてしまうような楽しい公演。表層はコメディタッチであるが、内容は深く考えさせる秀作。少し寓意的で教訓臭がするが、それよりも面白さの方が上回った。
    PTAの会議がいつの間にか裁判のような様相を呈し、さながら「12人の怒れる男」を連想してしまう。シチュエーション会話劇、伏線も回収し見事に収束させる巧みさ。2時間がアッという間であった。

    ネタバレBOX

    セットは、安井小学校の教室(または会議室)内。校舎は斬新なデザインで建てられているが、機能的には不都合が多いらしい。例えば壁に「転倒注意」の張り紙が貼られているが、よく児童が転ぶらしい。
    当初、真ん中に机が並べられ、後壁は上手から下手側に斜め(階段状)に下がっており、上手側の上部に別空間を出現させている。また壁には刳り貫いた窓のような。下手側には三角形をしたオブジェのようなものが立っている。会議が始まると自由自在に机を動かし観易くする。

    梗概…学校の女教師が交通事故死した。その結果、児童に自転車運転免許制度を導入しようと話し合いの場が持たれた。低学年、高学年の2区分で、仮免許・本免許という免許制度の採用是非は漂流するように賛否が揺れ動く。その会話・議論の過程が面白可笑しく描かれる。そもそもPTAの会議に用務員などが参加しているのも不可解であるが…。免許制度の採否を本筋にしつつ、全国模擬試験最下位(平均48点-フォーティエイト)であること、女教師の事故原因に問題がありそうなこと、女教師がスーパー優秀教師像が持たれていたが、本当は普通の教師であること等、サブストーリーを上手く絡ませる。

    会議を仕切る立場にある教頭が、イエスマンで誰の意見にも賛成・迎合してしまう。他人と摩擦を起こさない処世術のようだ。この何もせずダンマリを決め込む姿が滑稽であるが、現実にいそうな人物像である。狂言回し的な教頭の演技が実に上手い。もちろん、他の役者も登場人物の性格、立場、バツクボーンをしっかり見(魅)せ、あちらこちらに話題が転じるが、その点と線が見事に繋がり収束する。教育委員会から送り込まれた「解体屋」の正体も明かしスッキリさせてくれる。

    教頭の思惑では、無難にすぐ終わるかと思われた会議が、波乱の展開になるアイロニー、親や学校が決めたルールでは息苦しく、伸び伸びとした学校生活が送れない。また画一化された文房具(学校指定)の弊害(折れないことの実験)が全国模擬試験最下位の結果を招いたアイロニー。いくつもの課題・問題を潜ませた公演は、笑いの渦を起すが、その底は深く考えさせることばかり。観応え十分であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/08/21 18:34

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