満足度★★★★
鑑賞日2017/08/14 (月) 15:00
劇団ぱすてるからっとが下北沢のGeki地下libertyを会場に、同じ舞台セットを使って2つの舞台、「裏シンデレラ物語」と「VRの中のアリス」という作品を平行上演する企画のうち、ダブルキャストで行われた「VRの中のアリス」B班の公演千穐楽を観てきた。実はこの作品、知人の役者・塚田しずくによる脚本、そしてB班は塚田自身の演出での上演と言うことで、期待して出かけた。
ある会社の営業部でナンバー1の成績を維持する桜田。最近両親を亡くし妹と2人暮らしの苦労も出さず仕事に熱中する桜田を心配して、上司の榊部長は有給休暇消化を命ずる。仕事が生きがいだった桜田は、それを自分のことを首にするリストラの始まりと勘違いをし、送り主の分からぬVR用眼鏡を装着してVRの世界でアバターのアリスとチャット交流を持つようになる。そんな兄を心配する妹・恵、同じ会社の社員で桜田に好意を寄せる涼野、そして行きつけの居酒屋の面々や会社の同僚達。彼らの心配する気持ちが通じたのか、桜田は気を取り直して再び会社に行きだし、周囲の人々は安心する。
舞台中、桜田の家庭の境遇が分かって行く家庭で観客がホロリとする瞬間があり、観客の泣きを呼び込むコツもまだ雑ではあるが身につけていると察した塚田の脚本。VR用眼鏡を送られてきた桜田と居酒屋の嫁の関係、アバター・アリスの正体など、もう少し解き明かしてもらいたい謎が放置されていたのは残念だったが、桜田、その妹、涼野、会社の後輩・木下の人物描写はなかなかのもの。
役者の演技的には桜田役の二葉と、妹役のとんちゃん、居酒屋のバイト・李役の宮﨑をはじめ、みんな熱演していた。多少演出をもう少し簡略化して言いたいことの焦点を明確にした方が良さそうなシーンもなきにしもあらず。ダンスシーンとアバター・アリスの歌うシーンを必然化させる工夫も、あと一歩かな。しかし、総じて頑張っていた演出だった。こうなると、異なる演出だったA班も観るべきだったと反省。
ちなみに、個人的に気に入った役者は、同僚社員・橋本役の高橋であった。