満足度★★★
押井守による押井守のための鉄人28号
良くも悪くも押井ワールドが炸裂していた。
それほど多くの押井作品を観ていない私から見ても、多くの「押井守」が舞台に溢れていることを確認できるほど押井ワールドが炸裂していたと言える。そういう意味では、いつもの自分を押し通した凄い人だ、とも言える。
もちろん、大もととなる設定自体が、「別の昭和史」というところが押井節で、組織や時代から「外れてしまった者」たちの哀歌という、実写やアニメと同じの印象だ。そこは面白い素材だと思うのだが。
レビューと称する舞台なのだが、肝心の歌も歌詞がイマイチ聞き取れない。リフレインが少ないからだけでなく、台詞のように内容を込めているからだろう。
とても大切な役の南果歩は、台詞のところはさすがと思ったが、歌が下手だった。ただ、曲はとてもいい。
舞台は拡散するだけでまとまりがなく(まるでサブストーリーの第二弾を作るつもりのような「えーっどうなったの?」が散りばめられているだけ)、一部の押井ファンと押井自らのためだけにつくったものとしか思えない代物であったと言わざるを得ない。
ただし、上演時間も長くなく、変な雰囲気のまま進む舞台は、「あれっ? 思ってたよりも面白かったかも」という感想もあった。
押井守の舞台はたぶんこれで最後だろう。だから「アレ見たよ」とほんの少しだけ自慢できる舞台であったとも言える。
で、結構楽しんだのだ。