大帝の葬送 公演情報 ロデオ★座★ヘヴン「大帝の葬送」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/07/02 (日) 13:00

    十七戦地の柳井祥緒さん脚本・演出でこのテーマなら、
    繊細さと大胆な構成を両立させるに違いないと信じていたが、まさに期待以上だった。
    大帝の葬送の実行に至る裏方の160日間を、会議室という限られた空間で描く。
    柳井さん得意の設定で、史実をなぞるだけでない厚みのある人間ドラマになっている。
    こんな重いテーマなのに、時々くすりと笑わせるのは台詞と役者の力。

    ネタバレBOX

    天皇の体調悪化を受け、宮内庁内では具体的な準備が始まる。
    お上に仕える奥の方と、事務、警察、儀式、法律など様々な分野の責任者が集合、
    政教分離と伝統の継承に配慮した新しいかたちの葬送を模索する…。

    現実的には会議室に入れないはずのライターを狂言回しとして配したのが良かった。
    ラストで明かされる奥の方とのつながりから、お上に対する強い思いを持ち
    同時に国民の一人としての素朴な視点も持ち合わせている。
    演じる澤口渉さんの緊張感ある台詞がドラマを引っ張り、時間の経過が解りやすい。
    「関係者席」として確保していた客席の椅子を3か所使ったのも上手いと思う。

    同じく現実的ではないが、元華族(?)で右翼の女性「愛国の方」を入れたのも良いスパイス。
    実際右翼団体の動きには神経を使っただろうし、発言・行動にはリアリティあり。
    中村真知子さん、後半の精いっぱい虚勢を張った姿が強く印象に残る。

    そのほかの登場人物は皆リアルで、それぞれの陛下に対する思いと
    職業人としての高い意識を感じさせて共感を呼ぶ。
    熱い思いが先走りがちなメンバーを押さえつつ会議をまとめていく事務の人、
    演じる音野暁さんの実直なキャラがハマって、要の役割に相応しい。

    奥の人を演じた朝倉洋介さん、お上のお側近くに仕える人らしい品格と端正な動き、
    「鏡を使ってお上に月をお見せした」と静かに話すだけで涙が出そうになった。

    同じく奥の方の女性役、百花亜希さんの着物姿が凛として美しい。
    伝統と改革をバランス良く備えたキャラが大変魅力的で、皇室の未来を感じさせる。

    崩御も“国家のアピールと国会運営の一環”とみなす政治家の先生が良いキャラ。
    後半一転して、愛国の方に「スーパーのレジ打ちでしょ」とぶちかまして黙らせるところ
    スカッとして実にカッコ良かった。何だ、いいとこあるじゃん、この先生と思わせる。
    演じる大原研二さんの座る姿勢や扇子の使い方がいかにも”先生“らしくてリアル。

    大喪の礼当日、見送る人々の傘が濡れていたのも細やかな演出でとても良かった。
    メモや印刷物が乱雑に散らかった会議室内が、
    事務の人によって丁寧に回収されていくシーンが象徴的。
    ラスト、ひとり号泣する彼に共感せずにいられない。

    難しい宮内庁・法律用語を上手く説明しながらの台詞に工夫があり、理解を助けられた。
    当時を思い出して、改めて裏方の苦労をさもありなんと思う。
    映像の使い方、チラシのデザインも印象的。

    史実に別の視点を投入して、“事実を複眼で見せる”ことに成功している。
    これが柳井流の面白さだと思う。
    ライターと共に、時代の終わりと始まりを垣間見た思いがする。











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