期待度♪♪♪♪♪
エパーブ。漂流物のことである。海月、プランクトンなどを含む。最近、このように漂う人が増えたのではないか? 国というものが最早その価値を減じている時代にあって、だからこそ国家意識をすり込もうとする勢力が教育等を用いて洗脳を画策したがるのだが、ヒトがアイデンティファイする為に何を根拠律として措定するかについて、今までは己の内的規範の整合性と社会的位置の整合性が合致すれば、それが基本的には可能であるように思われた。今後ともこの基準に大きな変更は無いように思われるが、現在混乱を招いている原因の一つに、その社会の範囲が「国家」なのか、住環境を中心とした地域なのか、或いはイデオロギーや情報環境を同一とする多地域に跨るボーダレスなものなのかが鬩ぎ合っている状態であることがあるだろう。即ち、境域が不分明でるから、その境界領域も曖昧であり、人々は何処に根拠を置くことが正しいのか、という発想をしているから迷いに迷うのである。無論、判断を誤れば、差別を受けるなり、不利益を被るなり、排除されるということも起こり得る。それが怖いから宙吊りになり、結果、エパーブと化しているのだ。
無論、他国から入って来た人々の多くに言葉の壁や、風俗・慣習の差からくるデペイズマンが生じるのは不思議なことではない。仮に所謂差別というものが殆ど無い場合ですら、以上のようなことは起こり得る。そのような状況の中で尚、他国から移って来た人々が夢を持つことができ、叶えることができる可能性を担保せねばなるまい。
まあ、この程度の分析で、深刻なデペイズマンが、無くなる訳ではないし、まして、今作の主人公のような立場の人々が救われる訳ではない。だが、問題を背負わされるのは、解決の為に努力し得る人々に対してだけだと自ら信じ、立ち上がることができるのも、このような苦労を味わった人々だけなのである。