満足度★★★
複雑な構成にもかかわらず「エンターテインメントとして2時間突っ走る!」という意志はブラさず、実際になんだかんだで見せてしまう力のある芝居でした。さまざまな因縁、過去を錯綜させた物語の、暗渠のような暗さ、寂しさと、テンポの速い(時には笑いも交えた)演技やシンプルな衣装・装置のアンバランスにも、明るい虚無と暗い深層が入り混じるような独特の味わいがありました。
サスペンスの体をとった一種の伝統的自分探し劇ですが、ビデオカメラの使用、Youtuber、テレビで活躍した元漫才師……などの設定を通じ、虚実を曖昧にする現代的仕掛けも施されています。多彩な要素を複雑に見せること自体に、この作品のグルーヴはあるのだろうとも思う一方で、ここに描かれた現代の闇、あるいは過去からの呼び声に、もう少しシンプルに、俳優と共に向き合う余裕と時間が欲しいとも感じました。