大脚色 公演情報 Dangerous Box「大脚色」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     単に推理劇に終わらず、表現者論にも踏み込んだ知的な作品。素人さんにも分かるように、結構擽りも入れてあるから、幅広い層の人々が楽しめよう。

    ネタバレBOX

     舞台は、中央の応接セットを囲むように、天井から床まで白布が下げられているが、白布は2枚でワンセットになっており、応接セットの奥の高い位置に矢張り天井からブランコが吊り下げられている。
     オープニング早々、多くの役者が登場し様々な科白をポリフォニックに語るのだが、その後、2人の作家が登場、小説家という表現者の「位置」について語る。ところで、このシーンで実に大切なことが、現れている。その一つは、表現する者の意味及び結果として出来上がった作品と作家の関係、作品が出来上がる過程に於ける作家のコノタシオンと作品及び作品を受け取る者との関係を敢えて簡略化し、誤解するように誘導しているのだ。実は、今作、推理作品でもあるのでもう一つ仕組まれた罠があるのだが、無論それを明かせば、これから観る人の妨げになるから、明かさない。
     面白いのは矢張り序盤で、神の位置を人間の創造物として規定している点である。中盤でも極めて本質的な科白がある。ヘミングウェイが書いた聖書のもじりとして現れるその科白に於いて大事な部分が“無”に置き換えられている点である。ホメーロスの叙事詩、オデュセイアに描かれるオデュセウスの逸話に巨人、キュクロプスとの戦いについての挿話があるが、目を潰されたキュクロプスに「お前は誰だ?」と尋ねられた所でオデュセウスが、ウーティス(nobody)と応じたことに近いかも知れぬ。何れにせよ、この“無”は終盤、最終部に繋がる重要な部分である。
     終局、自分が説明して来た通りに話が進み、自死したヘミングウェイが変更する前の聖書の一節が語られる。と同時に、最初、自分が明かさないと書いたトリックの結果が、示されている。答えは今夜、劇場で確かめられたい。楽日である。

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    2017/06/12 17:21

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