ドグラ・マグラ 公演情報 演劇企画集団THE・ガジラ「ドグラ・マグラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/06/08 (木) 19:00

    奇書と言われる原作の異様な世界観が色濃く出ていて惹き込まれた。
    長台詞の合間に差し込まれる、流しの「水」、照明の切り替え、効果音、
    それに雑遊の造りを活かした演出が作品全体にメリハリを持たせている。
    それが作品理解を助けてくれる感じ。
    緊張感と”狂気“の2時間15分。


    ネタバレBOX

    拘束着のような白いツナギを来た男が目覚めたのは
    九州大学医学部精神病科の独房。
    記憶を失って自分が何者なのかも判らず混乱する彼の前に教授が現れ
    「自分で思い出さなければ意味がない」と告げる。
    男は殺人者呉一郎なのか、中国の猟奇殺人者の末裔なのか、
    さらに、研究のためには手段を選ばぬ教授たちの犠牲になったのか、
    次々と繰り出される過去の再現シーンは夢なのか現なのか…。

    全体像を把握することが出来ないまま引きずり回される感じが不快ではない。
    男と判らなさを共有し、伴走しながら同じ景色を見る感覚が面白い。
    「ドグラマグラ」は理解しようとするより、所々で展開する論理に感心する方が楽しい。

    例えば「犯罪者の記憶は遺伝子に組み込まれて連綿と受け継がれる」、
    「死人の腐敗する様を克明に描くことで、楊貴妃に溺れる皇帝を諫めようとする」、
    また「そのために了解を得た上で妻の首を絞めて殺害する」、等々。
    作品が発表された1935年当時の、夢野久作の想像力と狂気の表出方法に驚く。

    記憶を失い、今や存在そのものが危うくなった男の絶望的な孤独が
    もう少し見えたら良かったと思う。
    台詞を噛む場面が散見され、せっかくの緊張感が途切れてしまったのが惜しい。

    その中でアフリカン寺越さん演じる助手が不気味な空間を体現していて素晴らしかった。
    何度も観ている役者さんだが、しばらく気づかなかったほど。
    例えば鍬を振り上げる教授に無言で近づく時の緊張感あふれる動きや
    鍵束の音をジャラジャラさせて歩いてくる姿勢など
    座っているだけで強烈な存在感があった。

    呉一郎より、教授陣の方が狂っているような気がしてくる。
    照明と効果音が強い印象を残す演出はさすが。






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    2017/06/09 01:50

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