満足度★★★★★
「おねがい放課後」凄い、凄すぎる
名作の誉れ高き「ヒッキー」(約70分)、いろいろな要素をセンスよく凝縮させた、完成度の高い短編コメディだが、会場が五反田団アトリエ、出演者も五反田団の人だったりするので、自分はハイバイを見に来ているのか、五反田団を見に来ているのか、はたまたむっちりみえっぱりなのか、青年団の番外公演なのか、その境界線が時としてボヤける印象を抱いた。しかし、一方の「おねがい放課後」の圧倒的な強度、これには力強い「ハイバイらしさ」を痛いほどに感じることができた。驚異的傑作である。緩やかな日常性と激烈な非日常性のダイナミックな転換。荒唐無稽でありながら繊細に描き出される青春の甘酸っぱさ。随所に様々な形で「演劇論」が提示されることにより自己客観視を怠らない周到さ。そしてなにより人間の存在に対する深遠なる洞察。岩井にとっての「8 1/2」(フェリーニ)的到達点といえるかもしれない。そして今のプレビューキャスト、必ずしも完成度が高くない役者であるからこそ、むしろこの、壮大にして豊饒なるハイバイワールドを「いい味」で表現できていると思う(それもまた演劇論の提示であろう)。ある意味、本公演以上に、貴重であり必見の舞台ではないかと思われる。