デッド・ビート・ダッド! 公演情報 演劇企画CRANQ「デッド・ビート・ダッド!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    案内するスタッフは喪服のようであり、当日パンフにはお清めの塩がついており、それを剥がすと「ご弔問ありがとうございました」という言葉が添えられている。観客もまた弔問者であり家族のドタバタ騒動をニヤニヤしながら眺めているような気にさせる。
    笑って笑って滑稽さを堪能させた後で、しっかり泣かせる感動作…葬式を題材にしたコメディの王道。
    (上演時間2時間15分)

    ネタバレBOX

    舞台美術が素晴らしい。中央にこの家、矢島陶芸店の居間とその続き部屋の二部屋がメイン。鴨居で高さを表し奥行きも作る。外との仕切りには硝子戸がある。上手側にはテラスまたはベランダ、その横に桜の木。下手側は玄関で、そこには等身大のマジンガーZが置かれている。

    タイトルの「デット・ビート・ダット」は、親としての責任を怠る父親が亡くなった という意味のよう。そのオヤジ・矢島蔵之助は、上演前にベランダ越に腰掛けて桜を眺めながら一人酒。本編には登場しないが、残された子供やこの家に出入りする弔問客の会話から、その人柄なりを知ることが出来る。上演前の姿から破天荒振りは想像できないが、薄紫の着物姿が一風変わったイメージを与える。

    矢島陶芸店(父は日本陶芸展大賞の桂宮杯を受賜。跡取りの次男が才能がないと嘆く伏線)には3人の子がおり、そこに隠し子が次から次に現れ、いつの間にか遺言書まで残していた。その遺された金額が多額(3億7千万円+α)で、相続を巡るドタバタが繰り広げられる。
    父の死を題材にして、集まる人間模様の哀歓を尽くし、なおかつ地方(九州方面の方言か?)という風土を持ち込み、葬式(自宅で通夜)という厳粛な状況を面白可笑しく描く。
    観終わった後に、本編中に登場しない死んだ父を通して、今を生きている子(隠し子も含め)の苦悩が浮き上がる。しかし、破天荒、無節操な行為が何故か残された人々のわだかまりを浄化し、再スタートを促すような感動へ。

    物語中の人物や設定は誇張しているが、まったくいないとは言えない人間観察をしている。人の悲喜交々、笑いと泣きを共感する武器として観客を巻き込んだあたりは巧み。遺産相続に関わった子(非嫡出子=弁護士が言う法律用語)も含め、6人が仲良く写真に写っている。そんなホッとさせる小道具を下手側にソッと飾るところも心憎い演出である。さらにシ-ンに応じて桜の花びらが舞い落ちる印象付けも情緒溢れる。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/05/03 13:18

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