光と影からの恵み 公演情報 BuzzFestTheater「光と影からの恵み」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    登場人物全員が善人であり、それぞれを思い遣る、そんなヒューマンドラマ。自分の大切な人をもっと愛おしくなる。その人のために二度と来ない自分の人生を必死に生きようとする。
    生まれ出悩み…人は生まれた瞬間から死に向かって歩み始める。人は何のために生きるのか。この公演では直接答える訳ではないが、生きていく中で味わう喜怒哀楽が夫婦という絆を通して描かれる。その普遍的なテーマを現実的な人物描写や視覚的表現でしっかり観せる。
    その観せ方、舞台美術、技術(音響、音楽、照明など)が大きな効果を果たしている。
    観劇日は補助席が用意されるほど盛況であり、この劇団・公演の人気のほどがうかがい知れる。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セット…場内に入った途端、その店内に入ったようで、家族・店に来る人達に混じって自分(観客)も同席しているような心温まる感覚になる。観客に如何に感情移入させるか工夫しているところに好感が持てる。

    舞台は東京にある沖縄料理店。上手側に座敷、下手側にカウンター席、テーブル席が設けられ、カウンター内には沖縄の酒(泡盛)。上部には祭りの時の飾提灯が吊るされている。その点滅が照明効果の役割をしている。それ以外にも沖縄をイメージさせるポスターや品書きを貼るなど、雰囲気作りに力を入れている。

    日常の坦々とした生活に変わらぬ幸せがあるが、それを芝居の中で観せるには色々と工夫が必要で、観客を飽きさせないことが大切。そこに病という死の影を落とし見せ場を作り出す。水面に波紋を…見事な展開である。

    冒頭、赤ん坊を寝かしつけるシーンから始る。主人公・坪内光央(藤馬ゆうやサン)と妻・恵美(上原多香子サン)の娘である。一方、光央の闘病生活は死を強く意識させる。生まれ出悩みのように、生・死を見つめるような対比が見事に描かれる。
    その見せ場が、病魔に侵され咳き込む姿、切ない現実を突きつけるが、同時に背中をさすり介抱する妻。その夫婦の愛情、周囲の人々の温かい思い遣りに人の滋味が感じられ、観客に深い感動を与える。愛情は、時に観るのも辛くなる様なシーン、その現実を引き離す役割を持っていたようだ。さらに沖縄の唄、踊りが精神的な安定をもたらすようにも感じる。もちろん日本各地にも同じように唄・踊りはあるが、独特な…原酒と水割りの違いのような”濃さ”で楽しませてくれる。

    夫婦とは楽しい時(光)だけではなく、悲しい時(影)もある。それを共有し分かち合う、そんな光景が観て取れる秀作。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/04/30 12:06

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