わが兄の弟 公演情報 劇団青年座「わが兄の弟」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    伝記ものだと、あまり興味を引かなかったが、とりあえず見た。やっぱり、元作品に強く印象を持っているがゆえにか、前半は退屈だった。

    しかし、後半、老僕のとぼけた演技、あるいは、メイドの切れのあるツッコミに楽しめた。さらに、最終場面における感動的であり泣けるところは盛り上がる。

    なんの犯罪もしていないのに、盗賊集団に回収された男のつぶやき。なにも良いことはなかったが、いまはしあわせであるという結論は共感できるところ。

    ネタバレBOX

    1880年,チェーホフの初体験相手は,兄が気をきかせて紹介してくれた商売おんなであった。チェーホフは,その背景をほとんど知らず,有頂天になり,結婚しよう!と提案するも,おんなは,続きがしたければ,倍の支払いをしてくれ・・・と,その場を後にする。

    ときは流れ,1890年,南サハリン・コルサコフ監視所。ここまで,チェーホフは,かつて愛したおんなに似た精神患者がいることをつきとめる。たしかに,かつての相手によく似ている。しかし,どうしても,おんなは双子の姉妹だと突っぱねる。

    チェーホフの作品群は,実は芸術のためでもあったが家族を養うためでもあった。かつて愛したおんなもどうやら,事情は似ていた。兄の絵画モデルをしていた彼女は美しかった。ほどほどに身も落とした彼女は,家族への仕送りに苦しんでいたのだ。しかし,家族は,非難こそすれほめてはくれなかった。そんな中で,彼女は,精神に異常をきたしていく。

    南サハリン・コルサコフ監視所で,再会するも,おんなは,三島由紀夫・豊穣の海の聡子さながらに,きっぱり知らないことであるという。

    おんなには,すでに,えん罪で収容されたまぬけな男とのあいだに4人の子どもがいた。さらに,もうひとり生まれることになっている。男は,ほぼ気ちがいなおんなでも,自分は幸せものだとつぶやく。最愛の妻を奪われてなるものか。

    全体的に,非常におさえた感じの気品のある演劇になっている。個々に目立つ役者がいたような気がする。下僕は,自分の父親が90歳で死んだから,絶対その年にならない。永遠に89歳だと言い張る。また,とぼけた味があった。

    お茶目なメイドが出て来る。自分たちの主人たちをかたっぱしから,辛辣に批判し,笑いものにする。その表現はとても気がきいていた。びっくりするほど,楽しかった。自分自身のしあわせより,他人の評判が気になる手合いだ。

    ほかにも,おもしろい場面,登場人物があった。とても良い仕上がりだった。

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    2017/04/16 16:31

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