満足度★★★
鑑賞日2017/03/14 (火) 14:00
座席2階LB列24番
新国立劇場の小劇場で上演中の、三島由起夫『白蟻の巣』を観てきた。新国立劇場には、これまでオペラやバレエを観に出かけて事は多数あったが、演劇を観るのが今回が初めて。小劇場はなかなか舞台の観やすいよいハコだと思った。
舞台はブラジルのリンス。コーヒー農園の農場主刈谷義郎と妙子夫婦と、一家の住み込み運転手である百島健次と圭子夫婦の二組の夫婦の愛憎劇。妙子と健次の心中未遂不倫を不問にして穏やかに過ごす農場主義郎と、その穏やかさと夫の心中事件に未だ嫉妬している啓子の言動が、物語を大きく動かしていく。結局、妙子は健次とよりを戻し、啓子は義郎と結ばれ二組の不倫関係が生まれるが、結果としてその不倫も再び不問にふされて穏やかで欺瞞に満ちた二組の夫婦生活が続くらしい・・・という余韻を観客に残して舞台は終わる。その尋常ならざる寛大さから来る空虚感が、題名に表されている。
登場人物は6名であるが、誰が主人公とも決めかねる。しかし、個人的にはこの劇の鍵を握っているのは百島啓子(村川絵梨)であり、好演だと感じた。元宝塚の安蘭けい演じる妙子は、せっかくの役者の個性が生かし切れていない感じ。義郎(平田満)と健次(石田佳央)はまずまず。台詞が役者というか役柄の人物を作り上げていく台詞劇的な要素を多分に持ったこの作品に、好演という言葉は当てはまっても熱演という言葉は異質なものに感じられるだろう。
舞台大道具と照明は、この規模の舞台としては秀逸であった。