舞台は戦後のブラジル・サンパウロ。コーヒー農園を経営する中年夫婦とその使用人夫婦を軸に物語は展開する。じめじめした熱帯雨林の湿度のように(行ったことないけど)、女主人・妙子の退屈と倦怠にまみれたじっとりとした情念に、ほかの登場人物たちそれぞれの情念が交差し重なり合い、徐々に緊張が増していく。中盤から物語は展開していく。2組夫婦のW不倫の描き方はエロスであった。
再び心中を図る女主人と使用人の夫。それを知った使用人の妻・啓子が主人の刈屋を罵倒すると、刈屋は啓子にありありと感嘆しその足にすがりつき、「お前は太陽だ、ブラジルの太陽だ」と繰り返す。そこ、その言葉にぐっときましたね。戯曲で読んでクサいな〜と思ったのだが、見事に立ち上り。刈谷の告白・独白が始まり、刈谷夫婦の過去や想いが語られる前の、分水嶺のような台詞でした。
満足度★★★★
退廃と諦めと生命力と・・・2組の夫婦・4人の男女の繰り広げる愛憎劇に引き込まれました。それにしても、人間って奴は・・・。
そんな4人の男女と生活し、一人正気を保っている半海さんがとても良かったです。
満足度★★★
鑑賞日2017/03/14 (火) 14:00
座席2階LB列24番
新国立劇場の小劇場で上演中の、三島由起夫『白蟻の巣』を観てきた。新国立劇場には、これまでオペラやバレエを観に出かけて事は多数あったが、演劇を観るのが今回が初めて。小劇場はなかなか舞台の観やすいよいハコだと思った。
舞台はブラジルのリンス。コーヒー農園の農場主刈谷義郎と妙子夫婦と、一家の住み込み運転手である百島健次と圭子夫婦の二組の夫婦の愛憎劇。妙子と健次の心中未遂不倫を不問にして穏やかに過ごす農場主義郎と、その穏やかさと夫の心中事件に未だ嫉妬している啓子の言動が、物語を大きく動かしていく。結局、妙子は健次とよりを戻し、啓子は義郎と結ばれ二組の不倫関係が生まれるが、結果としてその不倫も再び不問にふされて穏やかで欺瞞に満ちた二組の夫婦生活が続くらしい・・・という余韻を観客に残して舞台は終わる。その尋常ならざる寛大さから来る空虚感が、題名に表されている。
登場人物は6名であるが、誰が主人公とも決めかねる。しかし、個人的にはこの劇の鍵を握っているのは百島啓子(村川絵梨)であり、好演だと感じた。元宝塚の安蘭けい演じる妙子は、せっかくの役者の個性が生かし切れていない感じ。義郎(平田満)と健次(石田佳央)はまずまず。台詞が役者というか役柄の人物を作り上げていく台詞劇的な要素を多分に持ったこの作品に、好演という言葉は当てはまっても熱演という言葉は異質なものに感じられるだろう。
舞台大道具と照明は、この規模の舞台としては秀逸であった。
満足度★★★
鑑賞日2017/03/05 (日)
戦後間もない?時代の元華族出身の日本人ブラジルセレブ宅で起こるインテリ愛憎劇。
登場する人物はみな人柄も申し分ない大人だらけなのに、浮世離れした展開に共感できそうな人物は誰一人としていなかったが、強いて言えば下男みたいな立場の大杉さんかな?
狩屋氏の寛大さとは裏腹な、男のエゴが露呈した結末の行為が本能のような気がする。
舞台セットらしいものはあまり少なく、薄い大きな幕が際立って目立つが、幕に仕切られただけの舞台空間なのに、海外のお屋敷ぽくて印象的。
言葉は美しくも道徳的にどうなんでしょう、そんな教科書には載らない三島「純」文学を見た感じでした。
満足度★★★★★
たいへん満足でした。
役者の演技が、魅力的!
話の展開も、後半
がぜんおもしろくなってきて、あっという間でした。
こんな隠された名戯曲があったのですね。