The Dark 公演情報 オフィスコットーネ「The Dark」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    優れた舞台美術は、会場に踏み込んだ途端、観客を引き込み、視覚からさまざまな感覚を目覚めさせ、開演までの時間を物語の世界へゆっくり誘うかのようだ。

    本公演は、作:シャーロット・ジョーンズ、翻訳:小田島恒志、小田島則子で日本初上演だという。それは、ひとつの空間で奇妙に混じり合う3組の家族の物語、その実験的な作品は観応え十分であった。

    ネタバレBOX

    物語が展開するにつれ、視覚に訴えてくる奇妙な情景が、より鮮明になって舞台セットが内容に溶け、現実と虚構が混然一体となってくる。
    舞台美術は、吉祥寺シアターという高い天井の特長を活かし、3面3階の計9スペースで成り立っている。上手側にダイニングキッチン、上部に赤ん坊がいる部屋、その中間に別スペース。中央は玄関ドア、中間に引き篭もり青年の部屋、上部は洗面所・シャワールーム。下手側は高い天井窓、寝室、老女の部屋が設けられている。その多重層空間に配置された調度品は実にリアリティ(例えば、TVは本当に映る)である。いたる所に電燈があり幻影を生み出す。その照明効果が素晴らしい。

    登場するのは、同じ間取りのテラスハウスに住む3組の家族。その同じ空間を共有して同時進行するような話は、ある日突然の停電によって各々の家族が抱えた’闇”が浮き彫りになってくる。各々が独立した生活、それが停電によって生じた闇が心細くなるのか、妖しく心が躍るのか、お互いの生活空間へ関わり混じってくる。同じ間取り、しかし家族形態やそこに内包された問題の質・量は異なる。その違いを前提としつつ、それでも奇妙に同時進行するさまが面白可笑しく描かれる。けっして喜劇的要素は無いと思われるが、それでも滑稽に思えるところが巧い。

    物語に則した斬新な舞台美術であるが、奇妙に侵食し合う展開を助け、さらにうまく物語に溶け込んでいるのが魅力的である。ともすれば先走った奇の衒いになりかねないところをうまく踏みとどまり、公演の印象をより鮮明にしているところが素晴らしかった。

    役者陣は、登場人物の性格、立場などを取り込み、見事に体現していた。特に”闇”に蠢く感情表現は人それぞれ違うが、物語の混沌・猥雑に満ちた舞台を意識した演技になっており感心した。

    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2017/03/05 10:17

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大