ベネトナシュの彼女 公演情報 システマ・アンジェリカ「ベネトナシュの彼女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     約50分の作品。ファーストシーンでは、非常に中性的な感じのキャラクターが登場する。然し、様々なキャラクターを限られた役者が演ずるので、役柄によるメリハリが余り効いておらず、観客の多くがついてゆけないという印象を持った。

    ネタバレBOX


    作品の時空設定自体が、不分明なのが一因だ。わざと分かり難くして、迷うことそのものの追体験を観客に強いているのだろうか?
    精神病患者の見た夢なのか? それとも女学生の制服を除けば黒い衣装ばかりの登場人物の中で、たった独り白の衣装を着けている登場し、短い科白を吐いた後は赤い風船を抱えて最後のシーン迄眠り続ける男の子の見た夢なのか? 或いはベネトナシュという星から地球へやって来た宇宙人の、地球でのミッションも、宇宙人としての自分の名やアイデンティティーも総て失くしてしまった為、強く地球人になりたく思うのだが、擬態を見破られて自分が地球人に襲われる恐怖や、自分自身の不可解を解決できない陥穽に落ち込んで足掻いた果てに観た幻覚なのか? も分からないように構成されていることと、これらの登場人物に序列の差が無いことが、観客の混乱に拍車をかける。
    人物名でも「人形の家」のノラの名を使っていたり、RimbaudのUne saison en enfer中の有名な一行、また見付けた? 何を? 永遠を! というフレーズに対応する科白が出てきたり、更には、作品全体が、象徴性や喩に満ち満ちて居る為に、演じられているキャラが一体何を意味しているのか? 或いは不可解そのものを表現したかったのか? など、作家の意図が非常に分かり難い。
    役者の数を役柄分だけ揃えられればそれが一番簡単な解決法だが、劇団のメンバーそのものがそんなに居まい。では、どのようにキャラクターのメリハリをつけるかだが、役者に本当に役を生き切るだけの力があればともかく、学生レベルの人達にそれを要求するのは酷だろう。衣装を変える、という方法も考えられるが、予算やこの尺での早替えは無理がありそうだ。そう考えてくると、作家・演出家が目指したもの・ことは世界は不可解だということだという結論を導き出すことができようが、この結論に達する観客は殆ど0に近いのではないか? 演劇は観客にも分かる形で作らなければ、矢張り弱いのではないか? 無論、それは観客に媚びを売るとか、必要以上にコミットせよということではない。然し、演劇は最も手間暇の掛かるコミュにケーション手段である。苦労して上演に持ち込む訳だから、自分達の意が観客に過不足なく伝わる方がベターなのではあるまいか? 
     ところで、音楽の使い方などのセンスは抜群で、舞台美術も気に入った。更に深い領域迄言語化できるようになることを期待している。

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    2017/03/05 01:06

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