満足度★★★
鑑賞日2017/02/10 (金)
座席2列
モチーフは最高。
並行世界に生きる2人の恋物語。と書くとファンタジーぽく聞こえてしまうけれど、ダークどころか、まさに残酷劇。この並行世界の描き方が秀逸で、女性の世界は社会劇として、おそらく圧政下での革命運動を描きながら、男性の世界は極私的な閉ざされた世界を描いていく。この恋する2人はけして善男善女ではないところもよい。特に男性は、傲慢でエゴイスト、芸術至上主義で人の心を解することをしないという存在で、女性も娼婦崩れ(この「崩れ」というのは、その運命を受け入れるでもなく、そこから逃れるでもなく、ただ漫然としているという意味)、革命に同調するでもない。
結果、物語は悲劇を迎えるのだが、そこに作者の死生観を見ることもできて、その価値観も悪くない。並行世界を結ぶ2人の乞食の存在、そして彼らが渡す、恋する男女2人を結ぶノートが制限付き(使える期日が限られており、かつ伝えられる文字数が日々減っていく)ということも(理由は不明、ただの意地悪と思えなくもないが)悲劇性に拍車をかける。
女性の世界の始まりは、暗殺者の登場で高い緊張感で始まり、男性の世界の始まりはゆるーい空気とユーモアで始まる対比は、最後への道筋を思うと意外性をはらませる意図ととらえられ、気に入りました。とてもよいです。