満足度★★★★
昔あった懐かしい社会正義・糾弾劇である。だが、今のご時世で敵役も、かつてのように、雲上の人や影の人でなく、法律や組織が明確に糾弾されている。しかし、それでは一筋縄ではいかないところがあり、喜劇仕立て、風俗劇仕立てになっている。ベテランの作者だからそこはうまい。だがドラマの構造として、そもそも、倫理的なジャーナリズム精神と、具体的な法律や組織を対峙させても、笑や糾弾はできるかもしれないが、ドラマ的な成熟はないような気がする。笑って見られるがしらけるところもあるし、この程度のことはお客様が先刻ご承知である。そこがメディアが拡散した現代の難しいところだろう。作者は、新国立の芸術監督問題でよほど傷ついたのであろう。それは理解できるが、そろそろこういう素材から離れて、現代の「時の物置」を探してほしい。